氷の国6

【トマト】6　★ ページ6

「あ、ゆづやっぱりサラダ食べてる(笑)」

もぐもぐいただいていると、バイキングの食べ物を補充しに来たノブくんがやって来た。

今回、残念ながらノブくんはショーの参加を見送ったのだ。
本職の方をおろそかに出来ないから仕方ないか。とりあえずお互いにお疲れ様と言い合う。

「サラダ好きだからね。」

「そのサラダ、Aさまが作ってくれてんで。」

「え！」

思いもよらない言葉にびっくりして思わずサラダをガン見する。

「どうしても手伝いたいって言ってくれて…。」

ごめんな？と謝られるけど、本人がやりたいって言うことを止めることなどしない。

「それはいいけど…。そうなんだ、Aが…。」

たまに朝ごはんにサラダを作ってくれるA。でもこれだけの量を準備するの大変だっただろうな。
ノブくん達は毎日やってることだけど…。でも今は素直に嬉しい。

「だからよーく味わって食べてや。」

「うん。あ、てかさ。なんでトマトないの？」

そうだ。何気に俺のルーティーンの１つである、試合前のトマト。
今回はショーだけど、食べないとなんだかテンションが上がらないじゃないか。

「え？あぁ、なんかな、トマトが厨房から消えてん。」

はぁ？
いや、何その見え透いた嘘(笑)

「もぅー、はっきり言いなよ。用意し忘れたんでしょ(笑)」

何も罰を与えようって言ってるんじゃないんだから素直にミスを認めればいいのに。

「そんな訳ないやん〜。ほんまに無くなっててんて。」

空っぽになった料理の容器を交換しながらさらっと言うノブくん。

「じゃあ泥棒でも入ったって言うの？」

お城の警備は頑丈なんだぞ。そう簡単に泥棒が入ったりするものか。

「俺的には小動物かなーなんて思ってるけど？果樹園のリンゴもかじられてたってAさま言ってたし。」

あら、リンゴまで。

「トマト全部持ってったってこと？」

「おそらく。」

どんだけ好きなんだよ。と思いつつ食べ終わったお皿を持って席を立つ。

「まぁいいけど。…ご馳走さま。」

これ以上ノブくんの戯言に付き合ってられない。
軽く昼食を済ませてから、俺は準備のためにバッグヤードへ向かった。





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