検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:145,504 hit

【俺のだから】5 ★ ページ39

★ゆづサイド

温室の入り口に待機していたノブくんが反対するのを振り切って中に入ると、さも今、果樹園の近くでバンパイアの捕物が始まっていた。

しかもAに向かって一直線に飛んでくるあいつを見た時、心臓が止まりそうになるくらい嫌な汗がでた。

少し離れた場所から大ちゃんが網を持って走り寄ってくるけど、到底間に合いそうにない。
俺は咄嗟にバンパイアに向かって全力で走った。

「きゃ!」

Aの首の後ろに止まったバンパイアを、後先考えずに一気に引っぺがす。
その時、爪の先で首を引っ掛かれたけど、俺は細心の注意を払って噛まれないように両手で胴体の部分を持って捕まえてやった。

「無良、剣をよこせ!」

「はっ!」

一番近くにいた無良くんに叫ぶ。Aを危険な目に会わせたこともそうだし、ここまで暴れてくれた以上、もう解決策は一つだと思ったからだ。

バンパイアを地面に踏みつけて、受け取った剣を振りかざそうとした時、Aが俺にすがるように叫んだ。

「王子さま、どうか命だけは…!」

はぁ?!
危ない目にあったくせにこのバンパイアを庇うの?

「A下がってて。」

「ですが…。」

「下がれ!」

ここは情けなんてかけない。俺だって抵抗がないわけじゃないけど、一国の主として決断しなきゃならない時もある。

意を決してバンパイアに剣を突き刺そうとしたその時、バンパイアの身体の周りの空間が歪んでその体積が増した。

踏みつけていた自分の足が耐えきれずに、バンパイアを解放する形になる。

「な、なんだ…。」

誰かが訝しげな声を上げる。
駆けつけた大ちゃんが、みるみる大きくなっていくバンパイアに網を投げかけた。
そして剣を抜いて俺の横に付く。

「人間…?」

まさに今、ゆっくりと人の姿になっていくバンパイア。
目の前で起こる出来事はまるで幻のようで、周りの者達を黙らせるのに充分だ。

「……。」

誰も動けないでいると、完全に人の姿になったバンパイアが網の中で言葉を発した。

「い、痛たたた…。」

まだ油断が出来ない中で、大ちゃんがさらに剣を突きつけるのを俺は手で制止する。

「男か…。」

俺が踏みつけていた箇所が痛むのか、脇腹をさすっている。

「もう逃げないからさ、この網はずしてよ〜ゆづ〜…。」

「はぁ?!」

「え!」

バンパイアの第一声に、ここにいる全員の視線が一斉に俺に集まった。
今、ゆづって…?

【俺のだから】6 ★→←【俺のだから】4 ☆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (85 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
162人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鹿(プロフ) - カヨピさん» かなりゆっくりな展開になりそうですが、山あり谷ありで書いていきますね。知子さんのしゃべり方難しい(;・∀・) (2017年11月6日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
カヨピ(プロフ) - めっちゃ、」昌磨君と知子ちゃんいいです。ドキドキで、感動して、毎日見ちゃいます (2017年11月4日 11時) (レス) id: ecb81f9aab (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 海外のスケーターって、話し方がわからないからイメージしにくいです(*^_^*)羽生さんはとても個性のある話し方なので、いいですよね!パトリックはやっぱり羽生さんのライバルだよなぁと思います。また競いあってくれないかなー。 (2017年10月31日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 碧海さん» 何度も読んでくださりありがとうございます!大人な二人はまぁ期待せずに〜(*^_^*)でもここぞというシーンにいれたいですね。今回の主人公は敬語だから、なかなか新鮮味があっていいです。試合の前後は更新迷うんですけどね。 (2017年10月31日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
みなみ - スケカナでパトリックがまさかの台落ち。ゆづがいなくて張り合いがなかったかな。フェイくんって、不思議な雰囲気はありますよね。私の中でスケーターでバンパイア、というと、ミハル・ブレジナがイメージなんですよ。青い瞳と八重歯のせいかな。 (2017年10月30日 23時) (レス) id: e2f297e7a8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鹿 | 作成日時:2017年10月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。