氷の国6

【花束】5　★ ページ16

★ゆづサイド

バッグヤードの救護室のベッドに横たわる昌磨を、やるせない気持ちで見守る俺。

そして隣には気の抜けたさっとんが椅子に座って軽く脱力している。

「…まさかこのタイミングで寝るとかねーぞ。」

すっかり寝入ってしまった昌磨は、叩いてもつねっても一向に起きる気配がない。

「だけど…ただ眠いだけでよかったです。」

「さっとんごめんね。びっくりしたでしょ。」

俺が謝るのもどうかと思ったけど、一応謝罪しておく。

「いえ…でも最後まで滑りきってくれたので…。」

…そうだな。
演技中、すでにジャンプのタイミングが遅れてるなって思ってたけど、まさか眠かった…？

「眠りの国の王子も大変だね。」

これは昌磨のせいじゃないから責めるわけにもいかないか。体質だし。

「起きるでしょうか…。」

「うーん…。」

このままここで眠り続けることになったら、最悪自分の国へ帰れなくなるんじゃないか？

突っ立ったままそんなことを考えていると、不意に昌磨の付き人が駆け込んできた。

「すみません！王子がご迷惑を。」

どこかで見ていたのか、全速力で走ってきた様子に、俺とさっとんが顔を見合わす。
そして昌磨を見るなり、あぁ…やっぱり。と自らの額に手をあてて天井を仰いだ。

「これ起きる？」

よくあることなのだろうかと一応尋ねる。
すると、じっと昌磨の様子を見て…。

「これは…極度の緊張のために起こったごく短い周期の睡眠ですね。」

ごく短い周期…？え、睡眠に長いとか短いとかあんのかよ。

「昌磨くんは…大丈夫なんでしょうか。」

さっとんがまだ心配そうに付き人に話しかける。

「大丈夫ですが、次起きるのはおそらく…数時間後かと…。」

「「数時間後？！」」

俺とさっとんがはもった。
あちゃー、そんなに寝ちゃったら完全にショー終わってるわ。

残念だけど後半の昌磨のプログラムは見られそうにないか。
これじゃあ何のために長期滞在してもらったんだかわかんねーし、さらに期間が延びそうだ。

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