氷の国6

【花束】4　☆ ページ15

「わ、珍し！昌磨が感情をあらわにしてる。」

ノブさんが両手で頬を押さえながら驚いている。
私もここから見ていると照れている知子さんがよく分かる。

「可愛いですねー…。」

微笑ましく見ていると、突然昌磨さまが氷上にずるずると崩れ落ちた！

「「あ！」」

予想もしない出来事に、知子さんが慌てている。
私とノブさんも、思わず声を上げてしまった。

「どうしたんでしょう昌磨さま、まさか疲れてしまったとか？！」

「いや…。昌磨は体力おばけやからそれはないと思うけど…。」

騒然となる場内。
すぐに担架を持った救護班が駆けつけてくれたものの、症状がさっぱりわからないから、お客さんもざわざわしていてみんなが心配している。

そんな状況をここから見ることしかできない中、知子さんが必死に昌磨さまのそばで声をかけているのが分かる。

「まだ始まったばかりなのに…。」

ゆづ王子も心配されているのでは…。

するとようやく担架に乗せられてリンク外に運ばれる昌磨さまが、力ない動きで胸の前で手を合わせて、ごめんねのポーズをした。

「あ、気が付いたか？」

「ひょっとしてどこか怪我でも…。」

完全にバッグヤードに姿を消してしばらくすると、場内にアナウンスが流れた。

それを聞く限りでは、怪我などではないことと、予定されていた後半のプログラムがキャンセルになることが決定したようだ。

「あ、あれちゃうん。あまりに眠くて寝ちゃったとか(笑)」

眠りの国の王子だけに。とノブさんが冗談めいたことを言うので、さすがにそれはないだろうと心の中で突っ込む。

「知子さん…とても心配なさってました。」

昌磨さまのクワドが見れないのは残念だけど仕方がない。無理して身体を壊したらいけないし。

だけど私は後で知ることになる。
ノブさんの想像通り、本当に昌磨さまは突然の睡魔に襲われてショーを辞退したのだということを。





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