【フリー】9 ☆ ページ40
ついにゆづ王子の名前が呼ばれた。
フェンスのような低い壁をぽんと叩いて、後ろ向きに氷上へと滑り出る。
観客のすさまじい声援を受けながらスタートポジションへ。
緊張、してないのかな…。
こんな時、妻なのに何も出来なくてもどかしくなる。
リンクの真ん中でじっと動きを止めたら、お客さんも静かになる。そして、優しい音楽が流れ始めた。
「あ、ピアノ曲なんだ。」
隣で昌磨さまが膝に手を置いて座り直した。
綺麗な曲…。思わず聞き惚れていると、ゆづ王子の身体が宙に浮いた。
…わ、クワドジャンプだ！
着氷した瞬間、大きな歓声で会場が揺れる。
「完璧…。」
不意に聞こえた言葉を、ぐっと拳を握って、今のシーンと共に頭に記憶させる。
だけど一瞬一瞬があまりに早くて、もう次のジャンプが来てしまった。
「今度はコンビネーション…。」
誰かが言ってるそばから、また綺麗に着氷した。
「音が…すごい。」
今まで滑ってきた選手とは比べ物にならないくらいのスピードと音が、私の身体を駆け抜ける。
前に練習を見させてもらったパトリックとも少し違う、なんだかこう…力強くてしなやかで。男性なのに時に女性の様な印象も受ける。
「ゆづくん、落ち着いてる…。」
「なんか表情が無って感じ。」
昌磨さまと佳菜子さまの会話も聞きつつ、ゆづ王子の演技も見つつ。
今自分の頭の中がとても忙しい中で、それでも決して見逃すまいと目を凝らしてスケートを見る。
「頑張ってください…。」
「ここから後半だよ。ゆづまだアクセル跳んでないよね？」
「うん。たぶん最後に持ってくるんじゃない？」
ゆづくんのことだから。と昌磨さまが少し肩の力を抜いたようにおっしゃる。
「じゃあノーミスかもね。」
アクセルが最後だからノーミス…？
意味が良く分からない。
「あの、どうしてですか？」
「ゆづのアクセルジャンプの成功率は１００パーセントだからだよ。」
成功率１００パーセント？つまり失敗しないと？
ピアノの音が跳ねると同時に、ゆづ王子が前を向いてジャンプする。
あれ？さっきまでずっとジャンプは後ろ向きに跳んでたのに。
しかも着氷してからまたジャンプ。
二度目は手を上にあげてくるりと回る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
solko(プロフ) - 出来たら、二人の話も少し取り入れてくれると嬉しいです。結婚するまでの、ツンデレ感。とにかく、しょまさとの話なくて、ぜひ、よろしくお願いします (2017年9月7日 2時) (
レス) id: be8f63a0ef (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - solkoさん» わかるかも！知子ちゃんは眠りの国のイメージですね(・∀・)最初から王女さまなのと、後から王女さまになるのと、どっちがいいかなぁ〜？迷うなぁ。 (2017年8月29日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
solko(プロフ) - いつも楽しく見てます。しょまさと好きで、(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))眠りの国のお姫様がさとこちゃんだと超嬉しいです。二人の話がどこ探してもなくて。 これからも楽しみにしてます (2017年8月29日 1時) (レス) id: be8f63a0ef (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - suzuranさん» 昌磨くんのイメージはもうこれしかないと(笑)かっこよさはないですね、ごめんなさい(；・∀・)これから寝たり起きたりします。？？(笑) (2017年8月28日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» ご両親はそのまんま、ご両親です(笑)そして今回も一言も発することはありません。これは身内には絶対にしゃべらせないというポリシーによるのもです(*^_^*)(昔しゃべらせたけど)もう一人の母にも出て来てもらいたいですね！ (2017年8月28日 16時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鹿
| 作成日時：2017年8月14日 20時
