時間と距離を超えて17

【嘘】9　★ ページ48

三日後。
国別対抗戦は見事日本の優勝で幕を閉じたのだが、俺は何故か心のもやもやが晴れず、なんとなく朝からAに電話してしまった。

『ゆづ？おはよう！どうしたの？』

朝ご飯でも食べていたのだろうか。iPhoneの向こうからもぐもぐ食べている雰囲気が伝わってくる。

「いやぁ…。今日エキシ滑るから、ちょっと声聞きたくて。」

『え？意味わかんない(笑)』

確かにな。

「あ、国別見てた？」

『見てたよー！あの山本草太選手のプリンス何？！ちょう面白かったんだけど(笑)』

いきなりその話題に触れられてうなだれる。
あれなー…。

「しかもリンクサイドでこっそり見てる俺の苦笑いした顔が、ビューイングにアップで抜かれたし…。」

なんだか会場がざわつくと思ったら、自分の顔が映っててびびった。

『顔くしゃくしゃだったよ？しかもアナウンサーの人が、これは羽生さんからのサプライズでしょうか！って興奮してた。』

まじか…。あまりの恥ずかしさに破顔してたからな俺。
しかもまだ放送見てないから何言われてたかすっげー気になるわ〜。

「あれ全部真凜ちゃんのアイデアだから。」

俺がサプライズしたんじゃないことだけは言っておく。

『そうなんだ！私最初ゆづが選手席に座ってるのかと思っちゃった。』

似てたってこと？

「あれはシャレとして…どうなんだろ。」

羽生結弦ふざけすぎ。とか言われてないだろうか。

『ツイッターではみんな喜んでたけど？私もう笑いが止まらなかったー(笑)』

山本選手が色んなプリンスのポーズしながら応援してて。なんて今初めて知る事実だな、それは。

「あ、お腹の子供は？大丈夫？」

笑いすぎてうっかり生まれちゃったりしないだろうな…いくらなんでも今はまだ早すぎるぞ。

『もー、ゆづは心配性だなぁ。大丈夫だよ。』

「ならいいけど…。あ、お前こないだ仕事復帰していきなり田中とやり合っただろ。そーいうのまじやめろよな。」

えへへ(笑) と笑っているけど、あれはいちいち田中に対抗するAにも原因がある。

『あ、明日何時に帰ってくるの？牛タン弁当が食べたいんだけど。』

エキシビションが終わった後、さすがに大阪から仙台まで帰るのは遠いので一泊してから帰ることを伝えていたのだが、早速お土産のおねだりが。

【嘘】10　★→←【嘘】8　★

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す