時間と距離を超えて17

【嘘】7　★ ページ46

「実は妹がね、国別に出場するんだけど、応援のスタイルがいまいちまとまんなくてね？」

「あー、確かに応援は難しいよなぁ。」

ノブ君も経験したのか、やたら共感している。

「そこで！初日は世界王者のゆづ君をリスペクトする意味で、みんなでゆづ君をやろうかなって。」

え？俺をやる？

「ごめん、意味がよく…。」

「だからー、ペアの二人がプーさんの被り物して〜、男子シングルの草太君にゆづ君の衣装を着てもらって〜…。」

両手をぽんぽんと合わせながら説明してくれる。

「草太がゆづの衣装着んの？！(笑)」

「うん。似てるからコスプレ。」

本物の衣装着てコスプレって…。それめちゃくちゃ関西のノリじゃん。

「そんなのだめに決まってる。」

そもそも衣装なんて貸さねーし。

「さっきゆづ君の所属先の人にお願いしたら、いいって言ってくれたよ？」

へ？

「いや、だめだし。」

「なんかゆづ君のエキシビションの衣装を用意するついでに貸してくれるって言った。」

はぁ？！

「嘘でしょ？！」

俺の許可なくそんなこと…！

「後はプーさんのティッシュケースがあれば完璧なんだよね、ゆづ君あれ貸して？(笑)」

かわいく両手を出される。

「やだ。」

あれは俺の大切な戦友だ。たやすく他人になど渡せるものか。

「なぁなぁ、ちなみにさ、何の衣装借りたん？」

また興味本意でそうやって掘り下げる…。ノブ君のそういう所はいただけないわ。

「あのね、レッツゴークレイジーの紫のバージョンのやつでね？髪型もばっちりオールバックにしてやるって、草太君めっちゃ張り切ってる！」

今一瞬むせそうになる。よりによってプリンスを？！
…草太ぁ〜！！

「それめっちゃおもろいやん(笑)」

関西の二人組がキャッキャと盛り上がって…。
いや、言い方を変えよう。二人組だけが異様に盛り上がっている。

「おもろくないから。」

今から担当者に連絡してやめさせようと、iPhoneを出す。
だけどそれを察した真凜ちゃんにがしっと手で止められる。

「ゆづ君？ゆづ君は日本人だよね？」

いつになく真剣な表情で見つめられてこっちが少し怯む。

「そ、そうだけど。」

今さら何。

「国別の大事な試合で、日本選手応援しないでどうするのかな？」

「応援はするし。」

女子の時は解説しないから、リンクサイドで思い切り応援するつもりだ。

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