時間と距離を超えて17

【早く言え】3　★ ページ34

「じゃあどうぞ。」

「うん。」

パジャマの上からそっと触れてみる。もちろん何の感覚もないけど、想像力を目一杯働かせて色んな事を妄想する。

「すでに親バカ？(笑)」

何とでも言え。

予定日は夏だったから、スケートのシーズンが終わったら会えるのか。
出来ればショーも少し減らして出来るだけ一緒に…。

「あー早く会いてぇな…。」

「私は早くこの気持ち悪さから解放されたいよ〜…。」

じろりと睨まれる。

「俺にどうしろと(笑)」

「冷たい…。」

ドＳ…。と布団でお腹を隠されてしまった。

「男にはわかんないから。」

「風邪ひいてしんどい方がましだよ〜…。早く生んじゃいたいなー。」

「子育て出来んの(笑)」

「それも自信ないな〜…。」

はぁ、とため息をつくA。
これは実家近くて正解だな。不器用なAのことだ、絶対に何かやらかすに違いない。

俺だっていつも家にいる訳じゃないから、お母さんの存在はすごく心強い。
ま、まだまだ先の話だけど。

さて、何か食べようかなと、冷蔵庫を開ける。
Aが食べられなかったお菓子がたくさん残っているので少し消費しなきゃ。

「こんにゃくのゼリーか…。」

カロリーオフでいいかも。

「それまだ食べられるやつだから置いといて！」

…これは喰うのかよ。





二週間後、Aの一時退院が決まった。
約１ヶ月半ぶりの我が家に、やっぱりどこか嬉そうだ。

「ゆづの家のにおいがする…。」

「お前んちでもあるだろ(笑)」

なるべくばたばた歩かないように注意してソファーに座っててもらう。

「ほわぁ〜…気持ち悪い…。」

天井を仰ぎ見ながら言うAに、それ以外のセリフないのかよって思う。

「早速だけどA、俺明日出かけてくるから。」

「ほえ…。そうなの？」

仕事？と聞かれて、微妙。と答える。

「Aもやっと安定期に入ったし、明日記者会見してくるわ。」

「え？！」

持ち帰った荷物を片付けながらさらっと言ってやる。

はっきり言ってあまり気が進まないけど、所属先でももう抑えが利かないくらいマスコミからの問い合わせが殺到しているのだ。

田中も電話対応に困ってるっていうし。
ここは終息させる意味でも、一度俺の口から話した方がいい。

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