時間と距離を超えて17

【早く言え】1　★ ページ32

★ゆづサイド

午後、いつものように病院へ行ったら、ベッドで横になっているAが、暇だなぁ…。とつぶやいた。

「ねぇ、暇過ぎて死にそうなんだけど。」

「聞こえてるよ。二度も言うな。」

「iPhoneのゲームもテレビも飽きちゃったんだもん。」

さすがに一日中寝てるとなると、出来ることなんて限られてるか。

「あ、お菓子買ってきたけど食べる？」

「え？」

どんなの？と聞いてきたので、袋から取り出す。

「えっとー、レモンパイとポテチ。」

以前はシュークリームで撃沈されたので今日は乾きものにしてみた。
どっちも日持ちするぞ。

「…微妙。」

枕に顔をうずめられてしまった。

「んもー、じゃあ何なら食べられんの？」

「それが分かったら苦労しない…。」

毎日毎日選ぶ方の身にもなれ。とお菓子を戸棚にしまいながら、何だかんだ俺も暇なので携帯ゲームを取り出す。

「何してるの？」

「ゲーム。」

むくりと顔だけこっちへ向けたAが、珍しく俺のDSに喰いつく。

「ふーん、それそんなに面白いんだ。」

「やりだすと止まらないから。」

どかっと備え付けのソファーに腰かける。

幸い、お腹の赤ちゃんも危機を乗り越えて、俺とAもほっと一安心。
この病室にも慣れて、リビングと同じような感覚で寛いでしまう。

これで靴を脱いでソファーに寝転んだら、完璧に家仕様だわ。
時々看護師さんが入ってくるからそれは出来ないけど(笑)

「ねぇ、ちょっとやらせてよ。」

布団の中から手を伸ばして、よこせと催促される。

「だめ、胎教に悪い。」

「ちょっとくらい良いじゃん。」

文句を言われたけど、妊婦さんに敵をやっつけるゲームとかは良くない。
だけどAがあまりにしつこく言うので、俺はだいぶ前になんとなくダウンロードしたゴルフのゲームを読み込んで渡した。

「じゃあ…はい。それでもやってな。」

「へぇー、ゴルフゲームか…。」

とりあえず穴に入れるだけだからAでも出来るだろう。
嫌ならやめればいいし。

「ねぇ、それより今日の検診どうだったの。」

けろっとしてる風なので、大丈夫だったのかな。

「うん。ちゃんと心臓も動いてたし痛みも減ったし。二人で頑張ってるよ。」

DSを操作したままさらっと言われる。
そっか…、よかった。

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