時間と距離を超えて16

【周りの声】5　☆ ページ30

……。
待って、じゃあ何を着ろと？
内心あたふたしていると、ジュンジュンがびっくりする事実を教えてくれた。

「羽生さん、現役の時からやたら服のセンス突っ込まれてたからなぁ〜。」

そ、そうなんだ。前からなんか顔と釣り合ってない服着てるなーって思ってたけど、ファンの間でダサいって言われてたなんて知らなかった！

だけどあの薄い顔に似合う服って…。
よーし、帰ってから調べないと。これは奥さんに課せられた重要な任務だ。

一人ぐっと拳を握る。
これからもっともっとファンの人を満足させられるように、頑張らなきゃ。

「姉ちゃん顔がまじだけどどうしたの(笑)」

「妻としての闘志を燃やしてる。」

「は？」

今日一日でどれだけファンの人がゆづを思っているか、よーく分かった。
ジュンジュン、もうすぐ君にも分かるよ。私の気持ちが。





ロビーに着いたので適当に椅子に座って待つ。
会場を出る準備が出来たらゆづがメッセージをくれることになってるんだけど、まだまだかかりそうなのでジュンジュンとしばし雑談。

「ねぇジュンジュン、今日泊まることちゃんと親御さんには言ってきたんだよね。」

「当たり前じゃん。あ、これ渡すように言われてたんだ。」

そう言ってカバンから封筒を取り出した。

「お手紙？」

「うん、親から。」

そっと開けると、便箋に丁寧に書かれた文字がびっしりと並んでいた。
内容は、お世話になります的なことだけど、ちゃんとしてて感心する。

後でゆづにも見てもらわなきゃ。
もう一度折り畳んで封筒に戻す。

「それと横浜土産のシュウマイ持ってきたんだ。」

「へぇ、じゃあ晩ご飯に食べようか。」

「姉ちゃんちで食べるの？」

「うん。ここから近いから。」

昨日のうちにばっちり食事の用意はしておいた。三人で外食はさすがに目立つし、ゆづも疲れているだろう。

それにメニューはゆづ直伝のマッシュルームカレー。
前に私の誕生日に作ってくれた、ひと味違うじゃがいもの入ってないカレーだ。

食べ盛りのジュンジュンにはぴったりだし、何より食べる量が調整出来ていい。

「なんだかお泊まりってわくわくしてきたよ〜。」

「ゆづファンだからだよ？でなきゃ泊めないから。」

これも出会いだ。
ゆづが言ってたっけ、人生は出会いと別れの連続だって。

本当にそうだな、と噛みしめながら。
ジュンジュンという友達を大事にしなきゃって心から思った。




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