【夏の風物詩】5 ページ35
「……。」
「こら、初めてなんだからそんなこと言わないの。」
一応注意しておく。
さ、気を取り直して一花の方を見ると…。
「ふぇ…。」
「え？」
氷にうつ伏せのまま立ち上がろうとしない一花を腕を組んだまま見下ろしていた俺は、不意に聞こえてきた情けない声に耳を疑う。
「ふぇ〜ん！」
わ！
「ちょ、なんで泣く？！」
かがんで一花を起こしてやると、立つ気もなくさらにその場にへたりこんでしまった。
「たてないよぉ〜！できないよぉ〜…！」
リンクに響き渡る泣き声に、他のお客さんが何事かと振り返る。
「落ち着いて！せめて泣かないで、ね。」
なんとか立たせようと試みるけど…。なんか端から見たらこれ、俺が泣かしてるみたいじゃんか。
「ふぐぇっ…ふぐぇ…。」
「困ったなぁ〜…。」
立ってくれなきゃスケート教えられないし…。
とりあえずリンクの隅に移動して、他のお客さんの迷惑にならないように必死で一花を泣き止ませる。
少し落ち着いたかなーという時、またしても一花の口から後ろ向きな発言が…。
「かえる…。」
「え。」
今来たばかりなのに？！
「ママ…ママ〜…。」
本当に帰りたいのか、なんとか前へ進もうとリンクサイド側へ一歩踏み出した一花が…またこけた。
「だ、大丈夫？！」
今度は肘を強打した。今のは痛かっただろ…。
「う、うぅ…。」
だけど今は本人のやる気を起こさせなきゃ。
ここで逃げ出したら羽生一花の名がすたる！
「一花、頑張ろう！」
俺は一花を抱きかかえてさらにリンクの中央寄りへ進む。
「ぎゃー！やだやだ！かえる！」
だけど、じたばたする一花のスケート靴が身体にあたったのが痛くて少しイラっとする。
「だーめ、せめて立てるようになるまでは帰らないからね。」
何も前に進めとは言ってない。
ただ立つだけでいいんだ。簡単だろ？
すると一花の口から思いもよらない一言が出た。
「パパきらい！」
「へ？！」
い、今何て…。
「だーいっきらい！！」
ガーン！！！
嫌いって…一花が、俺を？？
「……。」
まじか…奈落の底に落ちるとはこのことか…。
あまりのショックに、俺はもうこれ以上ここにいることが出来なかった。
.
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鹿(プロフ) - 厨二病さん» ありがとうございます＾＾羽生さんがなにかネタを提供してくれないかな〜と思う今日この頃。 (2018年4月5日 16時) (
レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
厨二病(プロフ) - すごく面白かったです！続編期待してます！ (2018年4月4日 0時) (レス) id: 660c61ccc2 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - マナさん» ありがとうございます！長かったですよね〜。写真も野球もそんなに詳しくない中、よく書いたなって自分でも思います＾＾ここはほぼ子育てルームになっているので、またネタができたら・・・。ギャグですけどね！ (2018年3月22日 16時) (レス) id: 73ad5e2308 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ああああ 嘘でしょーーついに読み終わってしまった…これからでも続編書いていただきたい。。それほど素晴らしかった！！本当に面白かった！！これからも期待してますよー^^ (2018年3月20日 23時) (レス) id: 595eca3f4d (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» 羽生さんの口調好きですわ〜。なよっぽい部分もありつつ、攻撃的な部分もありつつ。けっこう独特ですよね、方言でもないし。(*・∀・*)ノ (2017年8月19日 18時) (レス) id: 5b18a5bb03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鹿
| 作成日時：2017年2月24日 18時
