時間と距離を超えて11

【リベンジ】10　☆ ページ29

「ちなみにA、会社には俺とのことなんて言うの。」

「え、特に何も？」

そんな事考えてもなかった。
羽生結弦と住んでます、なんて口が裂けても言えるわけがないし。

「なんで。同棲始めましたー、くらい言ってもいいんじゃない？」

「嫌だよ、恥ずかしい！」

住所もほとんど変わってないし、わざわざ伝えなくてもいいと思ってたけど。

「ふーん、じゃあさ、田中は？最近どうなの。」

「あ、なんか女の子の影が見えるんだよー。クリスマスもね…。」

私はホテルで帰り間際に交わした会話をゆづに伝えた。

「へぇー、気になる子いるんだー。」

「彼も若いからね、そりゃいるよ。」

「そっかそっか、うん。」

にこにこと安心したようにそばに置いてあったプーさんを抱きしめるゆづ。

「小さな会社でよかったよー。あまりうるさく言われないし、やりやすい。」

「忙しいのがたまに傷だけどな。」

そうだ、明日はきっと…いや、かなり忙しいはずだから覚悟しておかないと。

「明日はゆづが晩ご飯作ってね。」

「え、俺が？！」

「だって休みでしょ。私何時に終わるかわかんない。」

するとゆづが、いきなりか…。とつぶやいた。

「…わかったよ、正月はカロリーオーバーだったから粗食だぞ。」

「うん、鍋でもいいよ。」

「鍋？！白菜買わなきゃもうないし。」

「じゃあ買い物からだね、頑張ってね(笑)」

肩をぽんとたたく。

「スーパーで白菜買う羽生結弦？まじかよ！(笑)」

「まじだよ。」

何回も行くのがいやなら、大きい白菜を買えばいいよ。

「…じゃあ、帰る時間連絡しろよな。」

「やったー。…わっ！」

手放しで喜んでいると、ゆづがプーさんを投げてきた。
顔面に当たって地味に痛い…。

「家事は分担だから、あくまで分担だから！」

「二回も言わないでよ(笑)」

面白い。
なんだかゆづの主夫への道がそう遠くないような気がするのは私だけかな？

私はプーさんを抱っこして、鼻をゆづの頬にちょん、としながらソファーの隣に座った。

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