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【持ってて】5 ★ ページ30

★ゆづサイド

俺はマンションのスロープでAを見つけて全速力で走った。
これで追い付けなきゃ後の祭りだと思ったから。

「A…!」

一緒にエレベーターに乗り込んで、8階のボタンを押す。

「…ゆづ、どうして?」

目を丸くしているA、その頬には涙の跡がある。
そしてまた泣かせてしまったんだな、と心底自分が嫌になる。

話がしたいけど、息がきれてうまく声が出せない。
少し落ち着いてきた頃、エレベーターが7階に到着した。
でも俺はすぐに閉ボタンを押す。もちろんAを家に帰さないためだ。

「A、俺んち来て。」

「……。」

手をぎゅっと握って、すぐに次の8階で降りる。
そして手を引いたまま、流れるような動作で自室のドアを開けて、中に入っていく。

ずかずかと冷えきったリビングまで来て、一度深く息をはいた。

「弁明させて。」

向かい合って、真剣に告げる。

「な、何言ってるの…。」

ゆづは悪くない…。と消え去りそうな声で下を向くA。

「何想像してるのか知らないけど、佳菜はただの友達だから。」

「佳菜…?」

「俺の好きな人は、Aだけ。わかるよね。」

顔をのぞき込むように肩に手を置く。

「…そんなわけない。」

「え?」

否定の言葉が返ってきて一瞬目を見開く。
その何もかもあきらめたような表情に、息を飲んだ。

「今までなんで気づかなかったのかな…。こんなにカッコいい人、他の子が放っておくわけないのに。」

「おい!」

「いいの、私一番じゃなくていいから!」

「何言って…。」

「だから…たまには私の所にも、来て欲しいの。」

その言葉を聞いて、絶望する。
なんだよ、この彼女としてのプライドを全部捨てたようなセリフ!
こんなん言わせて、俺なんなの?!

俺はAを勢いよく抱きしめて、どうすれば、今何を言えばいいのかを、必死で頭を回転させて答えを探す。

「…Aが一番じゃないなんて、冗談でも言わないで。」

今まで俺がお前のためにやってきたことを、全部無かったことにしないでくれ。

「……。」

「A、あのシチュエーションで何もないって考えるのって難しいのかもしれないけど、佳菜は本当にただの友人の一人だから。」

これ以上なんて言えばいいだろう。
真実は本当に単純なことだから、簡単すぎて説明に困る。

ここは言葉よりも態度で示した方がいいんじゃないだろうか?
いまいち信用してなさそうなAの涙を指で拭いながら、勢いに任せて、キスをした。

【持ってて】6 ☆→←【持ってて】4 ☆



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鹿(プロフ) - 心菜さん» じゃあ、裏でこっそり絞めちゃうような感じの話ですかね?^^ 怖いわ〜怖いけど面白そう!冷酷なゆづ。主人公を守ってほしいですね!四大陸まであとすこし〜! (2017年2月13日 17時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆめもちさん» 最近Sっぽさが多くてどうかな〜と思っていました^^ なんかバトルするようなお話を書きたいですね。本人っぽさがなかなか出せませんが、乙女っぽいと話が進みにくいんですよねー。 (2017年2月13日 16時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
心菜(プロフ) - 私も怖いもの見たさです『阿修羅のような冷たい笑顔』を拝見したいですww。いえ、Sではないんですが、羽生さん美しいだろうなぁと。いよいよ4ccですね!楽しみですね! (2017年2月12日 19時) (レス) id: 81bea81c1e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめもち - ついに!ですね。私用事があってしばらく見られなかったんですけど、久しぶりに見たらおぉ!で感じです。羽生くんの「阿修羅のように冷ややかな笑顔」絶対恐いですよね〜^ ^でも、Sが好きな私は嬉しい?(Mじゃないです!)彼女としてなら。 (2017年2月12日 17時) (レス) id: 7f41978512 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みなみさん» あまりにアクセスがすごくてうれしい反面怖くてアップしてしまいました^^;ここからどうつなげていくか…まだ定まっていませんが、けっこうはしょっちゃうかな〜。 (2017年2月11日 9時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鹿 | 作成日時:2017年1月30日 16時

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