時間と距離を超えて9

【子供か】7　★ ページ18

やっとCMも終わって、昌磨の……インタビューが始まった。
まだか、まだなのか。
インタビューの内容も気になるけど、今は試合見させて！

隣のAを見ると、無言でうなだれている。
…わかる、その気持ちちょうわかるから。

肩を抱き寄せて頭をぽんぽんとする。
今、全国の人が同じ気持ちだから。

短めのインタビューが終わってようやく昌磨の演技が始まる。
さっきまでの気の抜けた態度から一変して、食い入るようにテレビを見る。

「昌磨、がんば…。」

ここ一番の力が出せるように…。
念が送れるのなら届いて欲しい！
そんな第六感的なことを想像しながら、演技が始まった。

昌磨の目付きが変わる。
最初のジャンプへの助走、そして4フリップ。

「「うわぁ！！」」

少し着氷が乱れたか。

「どど、どうなの？！成功なの？」

「大丈夫、回転は足りてるからそんなマイナスにはならないはず。それより、次ループトゥ入れてくんぞ…。」

俺が現役最後のシーズンにやってたコンビネーションだ。
よく見とけ。とAに伝える。

「うわわ…怖い〜。」

「できる、できる、できる！」

Aの手を握ってその時を待つ。
そしてついに氷上を跳び上がった。

「「跳んだ！！」」

降りた！！
わぁ！と二人で抱き合う。

「すごい！すごいよ昌磨君！！」

「きれいだわ、これは加点付くジャンプだ！」

その後、ミスなく演技を終えた昌磨の得点を待つ。
これは確実に100点越えたな、ステップもかなり滑り込んでたし。

「なんだか別格じゃない？昌磨君。」

「この後もすごいスケーターが出てくるから、最終順位はわかんねーぞ。」

点数を待つ間、頭の中でざっと計算する。
表示された得点は予想通りで、昌磨は暫定首位にたった。

「やったぁ！」

「すげぇ、昌磨！」

ソファーから飛び上がって喜ぶ俺とA。
…だけど次の瞬間、俺だけお尻からソファーに逆戻りする。

「ふぇ？どうしたの、ゆづ。」

「あ、あれ？なんか…身体が変だ。」

それに頭も…。

「え！大丈夫？！」

Aがすぐに隣に来てくれた。
そして、なんか顔色が悪い！とおでこに手をあてられる。

「だ、大丈夫…じゃないかも。」

力が入らない。

「げ！熱あるよ？！」

熱？ど、どうりでなんか調子が悪いと思ったら…。

「さ、寒い…。」

「大変だ、とりあえず体温計は！」

Aにしまってある場所を伝えて、さらにタオルケットにくるまる。

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