時間と距離を超えて9

【子供か】2　★ ページ13

★ゆづサイド

玄関が騒がしい。
きっとAだな、やっと来たか…。

「お待たせ！」

「ん、お疲れ。ご飯用意できてるよ。」

今日からグランプリシリーズの開幕。
ずっと前から二人で見ようって楽しみにしていた。

「放送まで後何分？」

「一時間だから早く食べよ。」

「あ、お寿司だ。」

「コンビニのやつだけど。」

今日はなんだかさっぱりしたものが食べたくて、小さな握り寿司を二個買った。

「うわぁ美味しそう、お寿司にはビールだよね？(笑)」

でも途中で酔って寝ちゃうかなー。なんてふざけたことを言ってるので、ここはちゃんと釘を刺しておく。

「今日はだめ！ちゃんと隣で俺の解説聞いて？でないと夜中延々とDVD見せるから。」

付き合ってから初めてのスケート観戦だ。
絶対寝かせないし、終わってからもう一度録画観賞するつもり。

「わかったよ(笑) 思う存分しゃべりながらスケート見よ！」

Aも基本的にはスケート好きだから、一応文句は言わない。
それに、教えてあげたいことがたーくさんある！

「DVDじゃない、リアルな試合観戦なんて久々だからちょうテンション上がる。」

「上がりすぎて知恵熱出さないでよ。」

誰が知恵熱だ。子供か。

「とりあえず早くご飯たべよ。その後すぐにお風呂入ってテレビの前に集合〜。」

「お寿司お寿司！」

Aが熱いお茶を淹れてくれて、キッチンの椅子に座っていただきますをする。

早く始まらないかな〜…。
食べてる最中も、俺の頭の中は、スケートで一杯だった。





「ごちそうさま！あれ？ゆづ食べないの？」

「うん？…なんかあまり食欲ないな。」

先に食べ終わったAとは対照的に、まだ半分くらい残っている俺のお寿司。
たいして量も入ってないのに…。
お腹すいてないのかな。箸が進まない。

「また不規則な生活してるからじゃない？」

就職したら？とAにからかわれる。

「スケーターに規則的な生活を望むな。」

練習だって、明るいうちにリンクを確保するのもそれなりに大変なんだぞ。

「夜型だよねー、うらやましいな。朝、通勤電車に乗らなくていいのって。」

「そもそも電車なんて何年も乗ってないわ。その代わり泊まりの仕事とかあるからなー。」

「豪華なホテルに泊まるんでしょ？いいなぁ。」

「こないだ一緒に泊まったじゃん(笑)」

「お風呂入って寝ただけだし。」

「…他にもしたじゃん？」

「……。」

あ、赤くなった。

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