【奮闘】★ 1 ページ35
★ゆづサイド
土曜日。
ロシア語終わりの深夜0時過ぎ。
スケートリンクで向かい合う俺とAの間に流れるいつもとは少し違う空気に、身が引き締まる。
「A、いよいよ人生初のプログラムを作っていくわけだけど、心の準備はいい?」
腕を組みながらAの様子をうかがう。
「が、頑張ります!」
白い息と一緒に前向きな返事が出て安心する。
怪我のブランクで、一回転ジャンプの練習がほとんど出来なかったけど、このプログラムの中でマスターしてもらえばいいかな、と思う。
「じゃあ早速最初のポーズから考えるかな。」
「え。」
Aがきょとんとした顔になる。
「ん?何。」
「振り付けってもう出来てるんじゃないの?」
「今から滑りながらやるけど?」
気分次第でどうせ変わるし。
「そうなの。てっきり全部出来てるのかと思ってた。」
「ま、その場合もあるだろうな。でも今回は1分だし…じゃやろっか。」
真似できる所はしてみて?とiPhoneで音楽を鳴らしながら俺が先に動く。
最初は遥か向こう岸を眺める感じで…。
「こ、こうかな。」
「違う。向こうを眺める前に一度下向こう。その方がより動きが伝わりやすいから。」
「手は?」
「自分を抱き締めるように。そこから氷を蹴って少し進んで。そうそう。」
前や後ろに進むのはかなり上手くなってるな。
これでもっと感情を込めてやれば…。
「ストップ!今何やったの?」
「あぁ、悪い。つい細かいステップ入れちゃった。これはなしで…ここから片足で滑ってみ。」
「難しい!」
よろよろしている。
「ここ踏ん張って。次、give me a boatのとこで半回転ジャンプ入れるから。」
「待って待って!ここまで一度整理させて!」
「まだ開始20秒だぜ?(笑)」
初心者に分かりやすいように、頭打ちの拍で振りを入れてんのに。
「1、234だから…。」
「前にこのジャンプやったよな。右足で蹴って左足で着氷するやつ。この体制のまま身体を絞めてスピンしよ。流れが途切れないように注意して。」
「ゆっくりでいい?」
「いいよ。一度ここで足をクロスさせて、両手を鳥みたいに広げて止まる。それから…手で丸を切り取るか。」
こう?と空中に円を描く。
ここでスパイラルいれよう。
「あ、足がきつい…!」
「頑張って。アーティストはみんな我慢との戦いだよ?」
それをいかに優雅に簡単に魅せるかがポイントなの。
「だめだ〜。」
途中で足を下ろしてしまう。
267人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿(プロフ) - ゆめもちさん» 想像と現実が違ってたんですかねえ〜。勢いでっていうのほど話がつながらなくなる展開になるので、ここはまず仲直りですね^^ (2017年1月16日 15時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
ゆめもち - なぜ羽生さんは驚いてしまったのか・・・。最後までって決めたらやっちゃいなよ!と思うけど、やっぱりショックなんだろうな。好きな人の怪我は。早く仲直りして! (2017年1月15日 19時) (レス) id: 7f41978512 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みちさん» 田中の当て馬的存在が書いてて楽しいです!今はひたすら誕生日までのつなぎで、これもそんなたいしたことにはならないです^^書いてたらこんな流れになってしまっただけというか…。たまにはいいかな〜 (2017年1月14日 10時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - う〜ん深刻な事態ですね。 でも、その後主人公ちゃんを抱きしめるゆづを想像しています。毎回田中のおかげ?で2人の中がどんどん近くなっていくと言うか、結構いい仕事してくれますね! (2017年1月13日 19時) (レス) id: e8907b1922 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆめもちさん» はい。今更新しておきました^^背中を押してくださりありがとうございます。あまり面白く書けなかったような気もしますが、よかったらどうぞ〜。やはり出来上がった夫婦は難しいですね^^; (2017年1月10日 17時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鹿 | 作成日時:2016年12月23日 10時