【距離感】3 ★ ページ3
「I see.(わかりました。)」
「Thank you.(ありがとう!)」
あまり時間もないみたいなので、早々にリンクへ連れていかれる。
曲も振りもすでに用意されていて、後は覚えるだけみたいだ。
準備が出来るまで氷の上にくるくる弧を描いていたら、Aがそろそろと近寄ってきた。
「あ。」
「ん?」
俺を見て意外そうな声をあげる。
「ペアの相手ってゆづだったんだ。」
「あぁ、なんか頼まれて…。」
「私も通訳頼まれて…。」
そうなんだ。
結局氷上に揃ったのは、先生とエリザベス、それにAと俺の4人。
軽く挨拶を交わして、すぐに先生の指導が始まった。
早口な英語がどんどん出てきて、身ぶり手振りと同時に進んでいく。
英語なら割と理解出来るな。と思っていたら。
「そこ、手の握り方が甘い。」
「え。」
「もっと指と指をからめて。」
「えぇ?!」
何言ってんの、コイツ!
「…って先生がおっしゃってる、して。」
それを聞いた俺は先生をガン見する。
その表情たるや、さもエリザベスの為と言わんばかりだ。
「こうか…。」
言われた通りにすると、エリザベスもまんざらでもない様子で握り返してくる。
「次、抱き寄せたままで一度回る。優しくね。」
「……。」
これ、難しい。
二人のエッジの向きが同じじゃないと上手く回れないから、密着しなきゃやりにくい。
ぐっと腕を使ってエリザベスの腰を引き寄せる。
あれ?背中かな。
てかこの状態、なんか…。
「見つめあって、手を繋いだままスパイラル。」
「ストップストップ!」
先生がどうしたの?と聞いてくる。
いや、どうしたもこうしたもねぇし。
「さっきからくっつきすぎじゃない?このプログラム。」
Aに訳せという意味を込めて目配せをする。
「エリザベスの誕生日だからでしょ。ほら、早く。文句言わない。」
な、なんだよ。お前それでも俺の彼女か!と言う目でAを見る。
そしたらぷいっと横を向かれた。
あ、そういう態度とるんだ。
ふーん、じゃあこっちも指示通りやらせて頂きますけど。
俺は気を取り直してエリザベスの手を握る。
そして可能な限り引っ付いて、スパイラルで横切る。
途中A の方を見たら、なんとも言えない驚いたような表情をしてから、肩を落として後ろを向いてしまった。
それを見て俺は、また間違えてしまったかも…?と不安になりながらも、ここで止めるわけにもいかず、ただエリザベスとプログラムを完成させることを優先することにした。
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鹿(プロフ) - ゆめもちさん» 想像と現実が違ってたんですかねえ〜。勢いでっていうのほど話がつながらなくなる展開になるので、ここはまず仲直りですね^^ (2017年1月16日 15時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
ゆめもち - なぜ羽生さんは驚いてしまったのか・・・。最後までって決めたらやっちゃいなよ!と思うけど、やっぱりショックなんだろうな。好きな人の怪我は。早く仲直りして! (2017年1月15日 19時) (レス) id: 7f41978512 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - みちさん» 田中の当て馬的存在が書いてて楽しいです!今はひたすら誕生日までのつなぎで、これもそんなたいしたことにはならないです^^書いてたらこんな流れになってしまっただけというか…。たまにはいいかな〜 (2017年1月14日 10時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
みち(プロフ) - う〜ん深刻な事態ですね。 でも、その後主人公ちゃんを抱きしめるゆづを想像しています。毎回田中のおかげ?で2人の中がどんどん近くなっていくと言うか、結構いい仕事してくれますね! (2017年1月13日 19時) (レス) id: e8907b1922 (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - ゆめもちさん» はい。今更新しておきました^^背中を押してくださりありがとうございます。あまり面白く書けなかったような気もしますが、よかったらどうぞ〜。やはり出来上がった夫婦は難しいですね^^; (2017年1月10日 17時) (レス) id: 081c59540b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鹿 | 作成日時:2016年12月23日 10時