時間と距離を超えて6

【蹴り入れたい】9　★ ページ48

「A、今日は疲れたろ。もうこのまま寝る？」

「うん、ゆづ明日はお休み？」

「お休み。練習は行くけどね。」

いったん寝室を出て、他の部屋の明かりを消したり少し片付けをしてから、俺もベッドに入る。

「あ、今日からしばらくの間よろしくお願いします(笑)」

「ん？何をよろしくされるのかな？(笑)」

Aとの距離を詰める。

「…何って、色々？」

あ。少し離れた。

「電気消すわ。」

手元のリモコンで暗くする。
Aがもぞもぞしているな、と思ったら隅に寄って俺に背を向けていた。

…なにこれ、拒絶？
俺はさらに近づいていく。

「だ、だめだよ！そこで大人しく寝てなきゃ。」

はぁ？

「何でだよ、俺ら彼氏彼女だろ？」

「そ！それはまだ、早いっていうか…。」

「大丈夫だよ、怪我人相手に取って喰ったりしねぇよ。」

てか、好きな人に背を向けられるのって、こんなに傷つくんだ…。
俺は今までどれだけAを…。

後悔してもしきれねーな、だけど同じ過ちを繰り返したくない！

「私やっぱりソファーで…。」

またもぞもぞと動き出したAに、さらにへこむ。
一緒にいたいのにソファー？
ふざけんな！

でもこれはAに対してじゃない。
あの時の俺にだ…。

「A、今までほんとにごめん。」

距離をゼロにして、後ろから抱きしめる。
もちろん身体が痛くならないように。

「ゆづ…？」

「何を言っても言い訳みたく聞こえるかもしれないけど、俺はAが好きだから…。」

だから、せめて拒まないで欲しい。
新しい信頼関係を築かせて欲しい。

振り向いたAをそっと仰向けにして、すかさずキスをする。
せめて気持ちを伝えなきゃ。
このまま離れて寝るなんて、あの頃のままで何も変わらないから。

「……。」

「これ以上はなんもしないよ。」

唇を離してじっと見つめる。
急ぎすぎると失敗するから、ここは慎重に進まないと。

Aの髪を一度だけ撫でて、おやすみ。と右の頬にまたキスする。
早く治りますように、と思いを込めて…。

そのまま布団を被って仰向けに寝たら、右手が不意にAの左手に触れたので、そのままぎゅっとにぎった。

ずっと一緒にいたのに…まだ始まってもない気がするのは気のせいか。

今A、何を考えているかな…と少し不安になりながら目を閉じた。

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