時間と距離を超えて6

【想定内】8　☆ ページ37

「Aは？あんたもそうなの？」

「……。」

突然話を振られて戸惑う。
私も今聞いた所だから、なんて答えていいのか分からないし、第一今日のゆづは意味不明だ！

「お母さん、僕が言うのもなんですが、Aはすごく不器用で、普通の恋愛は到底無理だと思うんです。」

…今さらっと非道いこと言われた。

「…そうね。」

「うん、まったくだ。」

顔を見合わせる二人。なんかめちゃくちゃ言いくるめられてる！

「そんなAを支えられるのは、世界中探しても僕一人だと思ってます。」

…これ遠まわしにばかにされてない？私。

「結弦君の気持ちは分かった。だけどA。お前はそこまで覚悟が出来てないように思うんだけど、正直どう思ってる？」

「わ、私は…。」

みんなの視線が突き刺さる。
ここは素直に自分の意見を言わないといけない場面だ…。私はぎゅっとシーツを握りしめた。

「ゆづのことは好きだけど…結婚とかはちょっと…。」

「それは想定内です。」

ゆづがすかさず割って入る。

「A、一生結婚しないって言ってたものね…。」

「最終的にはAの気持ちを尊重するつもりです。ただ良い結果になるように、僕は努力します。」

努力という言葉に、今までのゆづの頑張りを重ねてしまう。
ひょっとしたら本気なのかも…と思う。

「結弦君…そこまでAのことを？」

お父さんとゆづが見つめ合って…。
何だろう、このシチュエーション。ドラマ？

「お父さん、結果はどうであれ、私達はこの交際に賛成しましょう。」

「そうだな…。Aが結婚出来るとすれば、もう彼しか有り得ない気がしてきたよ。」

「ありがとうございます。」

ゆづが軽く頭を下げた。

「結弦君、娘を…Aをよろしくお願いします。」

「はい、勿論です。」

「……。」

私のことなのに、完全に私抜きで話がまとまってしまった。

「結弦君のご両親はなんて？」

「それはこれから話すつもりですけど、彼らは僕の性格をよく分かってるので、おそらく反対とかはないです。」

「…そうですか。」

なるほど…。
こうやって論破するのがゆづのやり方なんだ。

一通り話が終わって静寂が訪れる。
でも小さな電子音がそれを打ち破った。

【想定内】9　☆→←【想定内】7　☆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す