嘘と真実10

【新婚旅行姫路編】1 ページ40

最近、俺の手袋をかじるのにすっかりハマっている一花。
今日もベッドの中でよだれにまみれた手袋が痛々しい。

ご機嫌でいてくれるに越したことはないから、別にいいけど…。
そうやって遊んでいるのを複雑な気持ちで見ていると、iPhoneがメールの着信を告げた。

「あ、連盟から？」

しかもこれ、パソコン宛てのメールだ。
俺はすぐに画面を確認した。

「えーと、羽生A様？あ、これA宛てか。」

でもなぜこっちに来るんだろう？
このまま勝手にメールを読むのも気が引けるので、本人をここに呼ぶことにした。

「Aー、ちょっと来てー。」

向こうから足音が近づいてくる。

「どうしたの？一花おむつチェンジかな？」

「違うよ。Aに連盟からメールが来たから呼んだの。」

手袋食べてる一花を放ってはおけないし。

「あ、そうなんだ。見せて？」

Aに俺のiPhoneを差し出す。

「何のメール？ねぇ。」

気になって一緒に覗き込む。

「あ、仕事だ。」

「え！仕事って…カメラの？」

もう仕事復帰？！てか何で俺のiPhoneにAの仕事依頼が来るんだ。

「えーと、なになに？…げ！」

気分良さそうに見てると思ったら、今度は変な声が出た。
…なに七変化してんだよ。

「もう、よこせ。」

「あ！まだ途中なのに。」

ちっとも内容が分からないので、結局俺が取り上げる。
最初からちゃんと読んでみると…。

「え、嘘！」

そこにはしっかりと連盟からの撮影の依頼が書いてあった。
でも驚いたのはその行き先だ。

「結弦、今喜んでるでしょ。」

「わかる？(笑)」

iPhoneを返してAと顔を見合わせる。

「まさか付いて来る気？」

「当たり前じゃん！(笑)」

だって撮影の目的地が、俺が前から行きたかった姫路城だなんて。
こんなタイムリーな依頼ってある？

「仕事とプライベートは切り離したいんだけどな。」

「俺が一花見てるから、思う存分お城撮りなよ。」

抱っこしながらお城の中見るくらい問題ない。

「半日から一日かかるよ？いいの？」

「いいよ。今度は俺が一花とデートするから(笑)」

「それはそれで寂しいっていうか…。」

Aはこないだ一花とショッピングモール行ったじゃん。その時、お前だけずるいなって思ってた。

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