嘘と真実7

【念願】4 ページ37

うっとうしい…。
にらんでやった。

「そのドSさが100点！！」

さらにシャッター音が鳴る。
あ、逆に喜んだな、これは。

「もうよくない？疲れた。」

「うん、良いのが撮れたよ！今からプリントアウトしよーっと。」

先に寝てて！と言い残して、リビングから去っていった。
なんなんだ、一体。

「さむ。」

ぽつんと一人キッチンに残されて身も心も寒いわ。
さっさと脱いだ服を着る。
でもこれで約束は果たした。

出来上がりの写真に全く興味がないので、もう寝ようと寝室へ行く。

Aが来ても知るもんか。
俺はベッドの真ん中で、大の字になって寝ることにした。





「やっと完成したぁ！見てよ！！」

気持ち良く寝てたら、勢いよく開けられたドアの音と、Aの声でたたき起こされた。

「…うるせぇ。」

今何時だと思ってるんだと言わんばかりに時計を見る。

「４時ですね、朝の４時。」

「…失せろ。」

「それより見て！写真集が完成したんだよ。」

俺の目の前にばんっと広げる。

「うん、見たくない。」

そっぽを向いて布団にもぐった。

「じゃあ朝起きたら見て！枕元に置いておくからね。」

サンタさんのプレゼントかよ…。
早く寝ろと言おうとしたら、隣に入って来た。

明かりが消えてようやく静寂が訪れる。

「結弦、ありがとうね。」

背中越しに伝わる声と冷たい体温。
ひやっとした心地悪さに、身体をAの方に向けた。

「明け方までやるなよ…風邪ひくだろ。」

冷え切ったAの身体をぎゅっと抱きしめる。

「ごめん、嬉しくてつい。」

Aも俺の胸に顔をうずめてきた。
くすぐったくて気持ちいい。
幸せだなって、実感する瞬間だ。

「実物ここにいんのに…なんで海外いくの。」

大量の写真を持って行くくらい寂しいくせに。
日本でも他に仕事あるだろ。

「結弦のそばにずーっといたいからだよ…。」

「結婚したからもう叶ってる。」

前みたいにこそこそしなくてもいいし、住む場所も落ち着いた。
カナダにも、ついて来たらいい。

「せめて対等な立場でいたいの…まだまだ結弦は雲の上の存在だよ。」

「…ばーか。」

俺からしたらAのが雲の上に行っちゃうんじゃないかって思う時があるのに。

カメラマンと違ってスケーターなんて一生出来るものじゃない。
その後の事もしっかり考えておかないと…。

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