視界に暗幕、恋は横着 (ページ4)

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人知れず恋して人知れず終わっていく話。ページ4

【ぜんぶきみにあげる。】 東京22期/中野

　穢れなんてない、まっさらできれいな女の子だ。
「こんなの絶対脈なしじゃん、ほんとにどうしよう、助けて悠」
「いや別にそんなことないだろ。僕はよくわかんないですけど、結構仲もいいんでしょ？ Aが後ろ向きに考えすぎなんだって」
　Aはそうかなぁ、なんて少しだけ嬉しそうに唇を尖らせて、何杯目かもわからない酒を煽る。酒でどろどろになった目はぼんやりと机を這っていた。僕のことは決して見つめてくれないその目を穴が空くほど見つめて、彼女の真似をするように僕も酒を煽る。ここの店主が仕入れているらしい、どこかの地方の地ビール。美味いんだけど、勿体ないな、ちょっと苦い。

「今日は特別なんで、別にいいんですよ」
「なにそれ」

　大学時代から、気づけばその姿を目で追っていた。

　弾んだ声だった。今まではいつも死にそうなくらいに暗い声で、振られたのと言ってたくせに。

　ねぇなんで、あなたはそんなにきれいなんですか。普通、こんなに飲みに誘ってたら気づくでしょ。恋愛相談にのると言ったのに絶対背中を押さなかったら気づくでしょ。振られたときの呼び出しにいつもすぐ来るならわかるでしょ。こんなに一緒にいたんだから、少しくらい、わかるだろ。なぁ、おい、なのになんで、あなたは無垢な子どもみたいに、僕を信じてたんですか。

「……まったくもう、ひどい人だなぁ」

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