不器用な愛の形 2 (ページ44)

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上手く言葉がでなくて

どう伝えればいいんだろう

「あのね…えっと…ｯ」

中「ゆっくりで…いいから」

ぎゅっと私を抱きしめてくれて

甘酸っぱい檸檬の香りが鼻をくすぐる

落ち着く匂い

そのまま抱きしめたまま

トン

トン

トン

トン

落ち着かせるように背中を優しく叩いてくれて

「あのね…私、お兄ちゃんがいたの。5個上の」

中「うん」

「あのお店もお兄ちゃんと一緒にやっていたの。だけどね、お兄ちゃんはもういないの。私のせいで…私のせいで死んじゃったの…ｯ」

今でも忘れられない

あの夜

あの場面

「私、ストーカー被害にあってて、お店の帰りとか結構付けられてたの。だけどある日帰ってる時、そのストーカーに襲われちゃって」

中「…」

「片手にナイフが見えた。その時ね、ああもう私死ぬんだって。思ったの。だけど振りかざした手は私を刺さなかったの」

そう

あの時

私を庇って

「私を庇って…お兄ちゃんが刺されちゃったの…ｯ」

鼻につく独特な鉄の匂い

じわじわと広がっている赤いシミ

『いや！！！！お兄ちゃん！！！！！ねえ！！！！！やだやだやだやだ！！！』

「昨日、久しぶりにその日の夢見ちゃって、それで思い出しちゃって。ごめんね系さん迷惑かけちゃって。最低でしょ？わたし。私がお兄ちゃん殺したようなもんだもんね」

怖い

怖い

これを聞いた系さんはどう思った？

やっぱり最低って思ったのかな

あなたも私から離れて言ってしまうのかな

「……きらいにｯ…なら…ないでｯ…」

涙がつーっと頬をつたった

中「…嫌いになるわけねえだろ｣

「けいさん…」

中「俺もどう言葉をかけてやるのが正解なのか分からねえ。でも自分の大切な人を失った時の痛みならわかる。苦しかったよな？？」

苦しかった

お兄ちゃんがいなくなって

私どーすればいいかわからなくって

「くるしっ…かったｯ…」

中「お前は悪くねえし自分を責める必要はない。お前はちゃんとお前の兄貴のことを今でも大切に思ってる。その形があの店だろ？ちゃんと今でも大切に大切にしてるだろ？」

「うんっ…」

中「それにあの店がなかったら、俺とお前は出会えなかった。お前がちゃんと兄貴の意思を継いでなかったら出会えなかった。俺と出会ってくれてありがとう」

「けいっ…さっ…」

そこからはもうただただ泣いていた

たくさん泣いた

今までの苦しみを

洗い流すかのように

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