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搬送された先輩と、重岡さんが
手術室に入ってから3時間。

ずーっと苦しそうな声と励ます声が聞こえ続けた

慌ただしい雰囲気を醸し出す重たい扉の向こうでは
2人が頑張ってるんだと、手に力が入る。



無事でいてくれ、と願った瞬間
扉が開いて中から汗が滲む助産師さんが出てきた。

和「どうでしたか!!」

慌てて立ち上がると笑いかけてくれた


「母子共に健康です」

そう言われて、涙が出る。
遅れて出てきたのは疲れきった重岡さんと先輩


重「…和田」
和「お疲れ様でした、お2人とも」
重「ありがとう、ありがとう…」

先輩は、疲れて寝ている。
重岡さんは、安心したのか泣き出してしまった


助産師さん達が先輩を病室に連れていき、
重岡さんは近くのベンチに座り込む。

和「お水、いりますか?」
重「ん、ありがとう、もらう」

受け取る手は震えてて
怖かったんだろうなとすぐにわかった


出産の時の痛みはわからずとも、
不安や、息苦しさは男でもわかるんだろう

現に、重岡さんの顔は今まで以上に疲れが出てる。


重「怖かった…」
和「はい」
重「なかなか、産まれへんくて、このまま…」
和「大丈夫だったじゃないですか」

どうやら、最悪の事態が頭をよぎったらしい


和「それに、お子さんが泣いたの見たでしょう?
聞いたでしょう?なら、大丈夫だったんですよ」
重「…」
和「生きてる証拠です」

そう伝えると、顔を上げて力なく笑ってくれた


和「…先輩の病室行きましょう」

弱々しい背中に手を添えて、ゆっくり立ち上がり、
目的地の病室までゆっくり歩いた


重「俺、」
和「はい?」
重「…いや、なんでもあらへん」

重岡さんの中で何かが変わったらしい。
さっきまでの弱々しい重岡さんから
いつものギラギラの重岡さんに戻った

深呼吸して、手をかけるのは
先輩が眠ってる病室のドア





重「A?」



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作者名:ぽんちゃ | 作成日時:2020年5月26日 21時

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