唐紅 (ページ11)

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『ゴホッゴホッ、ﾋｭｯ、』

昨日とは打って変わって今日は一段と苦しそうに咳き込むこいつ

俺が来てから六日が経った。すなわちこいつの命は明日限りとなった

｢大丈夫か、、？｣

『ゃ、やぶ、さ、ん…』

咳が止まらず、顔も真っ青で見ているこっちが辛くなるほど

なにか、何か俺にできることは…

｢おい、何か俺にできることはあるか？｣

そうこいつに問うと、静かに首を横に振った

『やぶさんが、やぶさんがここに、いるだけでぃぃの、』

何もしてやれない

どうしてこんなことを今さら嘆いているのだ俺は、？

今まで目の前で苦しむ奴なんて数え切れないほど見てきた

そしてそいつらになんの感情も抱いてこなかった

なのにどうして…どうしてこうもここまで動揺する？

『ゴホッ、、ﾋｭｯ、はっ、、！！！！
』

｢おい、おい！大丈夫か！｣

慌てて駆け寄ると布団が鮮やかな赤に染まった

『ふ、ふふっ。喀血しちゃったね、、』

どことなく嬉しそうな表情を浮べるこいつに疑問を持つ

｢…なんでそんな嬉しそうなんだお前｣

『死ぬなら、どうせ死ぬなら死ぬっぽいことしてから死にたいじゃん』

俺にはよく分からない感情だった。辛いはずなのに、苦しいはずなのに笑みを浮かべるこいつが理解できなかった

『もうすぐ死ねるね』

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