時を編む ページ1
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ar×ym
ピピッ。ピピッ。
機械の音が響く真っ白の部屋
ここはアイツが眠っている場所
春。桜が咲く頃
「おーい!来てやったぞー」
酸素マスク越しの彼の顔色の悪さは変わらず
「ほら!お前の大好きないちごだぞー?今いちごが旬だから買ってきた!置いとくな」
この部屋に置いていったものが消費されることはまずない
だけどほんの少しの期待を持っていつも置いていく
「でさー、そのとき薮ちゃんに怒られちゃってさー」
近況報告はいつもの事。だってお前俺の会社でのこと気になってたんだもんな
「知念がさ、俺にご飯奢れってばっか言ってきてもう参っちゃうよなー」
知念に飯を奢る役割だったのはお前だったよな。なんだかんだお前も甘いからすぐ甘やかすんだから
夏。茹だるような暑さの日
「今日も暑かったなー!聞いてよ、今日猛暑日だったんだってーそりゃ暑いよなー」
彼の真っ白な肌は夏に合わないが、焼きたくても全く焼けないと自分話していた
「そういやもうすぐ夏祭りだな」
毎年色んな人の誘いを断って彼と夏祭りに行ってたんだ。男同士なのに雰囲気ないねって話してたってけかな
花火綺麗だねというお前の横顔を見て、何度お前の方が綺麗だよって言いかけたことか。お前はきっと知らないんだろうな
お前泳げないのによく海にも行ってたっけ
俺は泳げるのに浜辺で1人は嫌だからってよく砂遊びしてたもんな
でも結局海に入りたいって言って、俺が浮き輪を引っ張ってその上にお前が乗って海の中入ったよな
そんで、海の家でお前が食べてたかき氷一口貰ったらすっごい怒られたんだっけ
俺の一口はデカすぎるってね
顔真っ赤にして怒ってるお前、いちごみたいだったなあ
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作者名:しぐれ | 作成日時:2021年4月17日 19時