◆ ページ19
完璧に思い出したっていうわけじゃないんだけど…と前置きをしてから、るすくんっていう人と遊んだことがあるということを彼に伝えた。
「それでもええよ…それだけでも、すごい嬉しい」
彼と比べて私はほとんど覚えていなかったというのに、そんなこと気にしていないように嬉しそうに目を細める黒崎さんを見て、自然にこちらの頬の筋肉が解れていく気がした。
「私のこと、最初から知ってたんだね」
「そうやね。Aのこと、ずっと覚えてたから…やっぱ重い?」
「え?」
思わずそう聞き返した。彼の言葉にどことなく違和感があったから。
その言い方じゃ彼はまるで…
「ん?Aはそうは思わなかったん?なら良かったけど、でも子供の頃の初恋の子を今までずっと忘れないで覚えていたって自分でも重いよなーって思うんやけど」
この黒崎さんの言葉が、私を『もしかして』から『確信』へと変えた。
「…初恋?」
「?そうやで、Aが俺の初恋」
前に会食した時から彼の私に対する感情が初対面の人に対するそれじゃなかったことには気づいていた。けど、まさかあの頃私が知らないうちに想いを寄せられていただなんて。
「…」
どうしても、実感できない。これが今の私の心情を表すのにピッタリだろう。
記憶に霧がかかっていてあの頃の黒崎さんの姿さえ鮮明に思い出すのが難しいぐらい遠い思い出となっていた彼に恋愛感情を抱かれていた、だなんて言われても実感が湧かない。
けれど少なくとも私よりはあの頃をハッキリ覚えてくれていた彼に対してそんなこといえるはずもなく、けどだからといってあはは〜そうだったんだねーなんて言って笑いとばせる器量は私には無い。
だから何も言えずにいた私に黒崎さんはA、と私の名前を呼んだ。
彼は男性の中でも高身長に入る分類なのだろう。私が彼の整った顔を見るには、やや上を向く必要があった。
「A、聞いて。Aにとって俺はAの人生にほんの少ししか関与していないどうでもええ人間かもしれへんけど、俺にとってAは、俺の大切な初恋の人なんや…今でもずっと」
…今、でも?
ということはつまり、彼は今でも私のことをーー?
と、そこで私達から少し離れたところで私が毎日聞いている声が降ってきた。
「…お嬢様?」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね!(?) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです!この話自分にドストライクすぎてヤバいです…!更新待ってます!! (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント&通知登録ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね! (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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