◆ ページ6
「え…」
彼の熱を含んだその声に背筋がぞくり、とする。
『やっと』ってどういうこと？そういえば彼は婚約者は私がいいって…。そこも結局未解決なままだ。
そしてもう一つ。
「あの、ち、ちか」
「ええやろ、久々に会えたんや。少しぐらい堪能させて」
そういって彼は肩に置いていた手をするりと、私の手に絡めさせる。
私の指と指の間に、彼の指先の感覚が伝わってくる。ひんやりと冷たくて細くて、でも弱々しさとかが一切感じられないぐらい硬いそれは、男の人そのものだった。
今まで恋人などいた事もないため男の人に触れられる、なんて経験は勿論無い。だからだろうか、手から伝わる彼の指先が、私の心臓をドクドクと、煩く鳴り響かせた。
まずい、これじゃ完全に相手のペースだ。そう思った時だった。
ドアの向こう側からザワザワと、話し声が聞こえてきた。恐らくお互いの両親達がそろそろだと思ってきたのだろう。
そしてその声はどんどん近くなっていき、やがてトントンと、ノックがされてから部屋の扉が開いた。
それを察した黒崎さんはサッと私から手を離した。
「失礼します。お二人共、話は出来たのかしら？そろそろお開きにしようと話していたのだけれど」
「ええ。お心遣い感謝します」
そういって彼は仮面を貼り付けたような笑顔をした。これが営業スマイルってやつか。
そしてこのお見合いのような、いや拒否権がないからお見合いではないか。まぁとにかくそれに似た何かの会食はこれで終了した。
彼はずっと笑顔を崩さずにいて完璧な役者による完璧な演技を見ているようで言い方は悪いが人間味がなかった。
お互いの両親も元から顔見知りであったためか特になんの問題もなく会話を弾ませていた。あちらのお母様は最後まで私に嫌味を言っていたが。
￣￣￣￣￣￣
自室に備え付けられているベットに腰を下ろしながらあの時彼に触れられた手をボーッと見つめながら彼の事を思い出していた。
あの人はどうして私にこだわるのだろう。婚約の話もそうだ、私じゃなきゃダメな理由が分からない。
彼は私と面識があるようだった。私がそれを覚えていないのはだいぶ昔のことだから、みたいのことを言っていたので会ったのは小さい頃ということだろうか。
確かに、小さい頃の記憶だなんてもうほとんど覚えていない。全くない訳では無いが、所々が抜けててあやふやなのだ。
「るすくん、か…」
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時雨(プロフ) - おもちもちもちさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただけるとこちらのモチベーションにも繋がりますのでとても嬉しいです(; ;)もう少しでまた更新できそうですのでそれまでもうしばらくお待ちいただけるとありがたいです^^* (2020年2月17日 17時) (
レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
おもちもちもち - やっっっっべぇめっちゃ好きです…(俺の語彙力飛んでった←)更新楽しみにしてるんで、無理のない程度に頑張ってくださいね！(？) (2020年1月17日 1時) (レス) id: b8721ff069 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - さくりさん» 返信遅れてすみません…!!コメントありがとうございます!!もう少ししたら更新が出来そうですので、それまでお待ちいただけるとありがたいです…!! (2019年12月5日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
さくり - 初めてコメントをさせていただきます〜、さくりです！この話自分にドストライクすぎてヤバいです…！更新待ってます！！ (2019年11月9日 17時) (レス) id: 11e1fd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ぽんずさん» コメント＆通知登録ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです、これからも頑張りますね！ (2019年7月15日 21時) (レス) id: 27a105a2bf (このIDを非表示/違反報告)
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