君と共に歩む IV (ページ2)

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▫訪れた幸福 jaehyun ページ2

「あ」
バイト終わりの更衣室。置きっぱなしにしていた携帯に届いたのは、1通のメッセージ。
“何時まで、外にいる”
「うそ」
通知を知らせる時刻は、今から約30分前。髪型が崩れないよう慎重に私服に着替える。
「ラメ、結構とれちゃってる…」
ロッカーに備え付けた鏡を見ながら、慌てて化粧直し。こんな日に限って、お気に入りのアイシャドウパレットは持ってきていない。
「あーもう、これでいいや…！」
最後にリップを塗り直し、バック片手に更衣室を飛び出した。
「すみません、お先に失礼します！」
dy「あ、お疲れ様。気をつけてね」
バックヤード入口で入れ違ったドヨン先輩に声をかけ、とにかく急いだ。

「オッパ！」
ガードレールに寄り掛かっている人に声をかけると、足元の辺りを見ていた彼が静かに顔を上げた。
『お疲れ』
白いTシャツに、ダメージの入ったデニム。それからスポーツブランドのサンダルを履いたラフな姿の彼。
「ごめんね、待ったでしょ？」
『うん、待った』
「…そういう時は普通、全然待ってないよって言うんじゃないの」
『…全然待ってないよ？』
「何それ、もう遅いよ(笑)」
『(笑)』
頬にえくぼを浮かべて、いたずら気味に笑うジェヒョ二オッパ。
「何で？迎えに来てくれたの？」
『近くにいたから、何となく』
「そっかぁ。ありがとう」
『車までちょっと歩くけど平気？』
「うん、全然大丈夫」
『じゃあ行こ』
差し出された大きな手、密かに感じるウッディな香水、近づいた距離。
『走ってきたの？』
「だってぇ〜！…カトク、気付くの遅かったから」
『はは、そんな慌てなくても逃げないのに』
すうっと、こちらに伸ばされた右手が、きっとぐちゃぐちゃになっているであろう前髪に優しく指を通す。
「変だった？…一応、鏡見てきたんだけど…」
『…はい、オッケ』
「ありがと」
いつもより小さい彼の歩幅が嬉しい。

「会えると思ってなかったから」
『？』
「もっと可愛いカッコで来ればよかったなぁ」
薄いピンクのフード付きパーカーに、ちょっとルーズめのジーンズ。足元は真っ白の厚底スニーカー。変なキャラクターの靴下はなるべくバレたくない、ちょっとした乙女心。
『そう？…別に、可愛いけど』
何となく視線を感じてチラリ、車道側を歩く彼を見上げる。
『俺の目に映るAはいつでも可愛いよ』
「…オッパ、キザ過ぎ…」
『ははは(笑)』
目が合うと、何となく照れくさくなって、彼の左腕にしがみついてみる。あぁ、幸せだなぁって。