▫燕の宴 ten ページ11
「…え」
ゴトリ。鈍い音をたてて使い古した通勤鞄が滑り落ちた。まだ見慣れない外観とオートロック、家賃の割に築の浅いそこは、駅からはちょっと遠いけれどそんなの全然問題なし。内見も正直そこそこ、ほぼ一目惚れで決めた我が家のドア。の前に。
「誰」
寄りかかっている人。黒いパーカーのフード、そこから覗く金髪にこんな髪色の知り合いはいただろうかと狼狽えるも、引っ越して間もないここの住所はまだ誰にも教えていないはず、なのに。
『…』
「…え？」
…あぁ、私疲れてるんだわ、そう思わずにはいられない状況に疲れた身体が余計悲鳴をあげている気がする。
『…ん』
「…」
暫く様子を見ていると、男の呼吸に合わせて上下していた肩が少し動きを止めた。途端、下ろしていた腕を伸ばしたと思ったら、パチリ。ぼうっとしていた私と目が合う。
『…誰』
「…いや、こっちのセリフですけど」
もしかしなくても泥棒！？…にしては変よねぇ、とこんな時に呑気な自分が何だか可笑しくなる。
『…レイさんちじゃないの？』
「レイだかユイだか知りませんけどここは私の家です」
『…』
「てかどうやって入ったわけ？施錠は？」
どうやら危害を加えそうにない金髪の男に次々と容赦なく疑問をぶつけていく。私は早く寝たいんです、社畜はお疲れなのよ。
『前の人と一緒に入った』
チャリン、ポケットから出したであろうシルバーの鍵が彼の手のひらで光っている。…あのさぁレイさん？合鍵の回収くらいちゃんとしてよ…と見ず知らずの相手に思わず愚痴る。てか普通に不法侵入なんですけど？犯罪じゃない？ケロッとした顔で欠伸をしている目の前の男に大ーきく溜息。
「てか早くどいてくれない？」
ここには貴方の探しているレイさんはいないのよ、そう言って帰宅を促すも、未だにそこから動き出さない彼。
『…』
「何、早くどいてよ」
ぐぅぅぅぅぅ
沈黙を打ち消すかのように大きく鳴り響いた音。
「…」
『お腹空いちゃった♡』
「…リクエストはある？」
クラリ、目眩がする気がする。
あぁ、私って本当に疲れてるんだわ。見ず知らずの男と食事を共にするなんて。でも不思議と嫌な気がしないのは何故だろう？
『うまぁい！アンタ天才じゃん？』
「…見た目の割によく食べるね」
『そう？』
オムライスを頬張る彼、オレンジの口元が何だか凄く子供っぽい。
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ぽん(プロフ) - Miseryさん» Misery様 コメントありがとうございます。長話になった事、EXOのお兄さん達が多く出ている事等、大丈夫かなと心配していたのでそう言っていただけて本当に嬉しいです。上手くお話がまとまれば続編も考えたいと思っております、これからもどうぞ宜しくお願い致します。 (6月18日 18時) (
レス) id: cfe8a22e27 (このIDを非表示/違反報告)
Misery(プロフ) - ぽんさん、はじめまして。いつも楽しく拝読しています。ジェノの「年下の男の子」は設定が良くて、周りの人も最高で大好きなお話になりました！ぜひ続きを読みたいので、気が向いたらよろしくお願いします！ (6月18日 12時) (レス) id: 2a6e681517 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽん | 作成日時：2023年6月16日 12時
