救世主は遅れて現れる ページ36
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戻ってきたところで母の俺に接する態度が変わっているわけもなく、それからはまた飢えと暴力に耐える日々が始まるかと思われた。
しかし、向こうの世界で宣言した通り、涼太はその風向きを変えようと頑張ってくれた。
つまり、母に面と向かって抗議の声をあげてくれたのだ。
dt「ねえ母さん、もうそういうのいい加減にしてよ！翔太が殴られたりこき使われたりしてるの見たら、俺だって気分悪いよ」
あの時の涼太の震えた声と、それと裏腹な強い眼差しは忘れられない。
俺のために、どんなに怖い思いをさせたことかと思うと、やっぱり申し訳なくなるけれど、それでも彼は危険を顧みずに母に立ち向かってくれたのだ。
俺は涼太の勇気に胸を熱くした。
そして幸いなことに、母の反応は俺たちが思っていたほど酷いものではなかった。
『涼太、どうしてそんなこと言うの？私は涼太のためだけを思ってやってきたのに…！』
なんてヒステリックに怒りこそしたものの、憎しみの矢がそれ以上涼太へと向かうことはなかった。
改めて考えれば、母も母で涼太に嫌われたくなかったのかもしれない。
涼太が母のことを「わかりやすく媚びる人間にしか興味がなかった」なんて評していたのを思い出す。
それは多分、母自身がそういう生き方しか知らなかったからなのだということに思い至り、俺はひとり膝を打った。
しかし残念なことに、涼太の頑張りが必ずしもいい効果を生み出したかというと、疑問が残った。
というのも、母は俺をきちんと扱うのではなく、より陰湿な仕打ちをする方向に走ってしまったからだ。
涼太のいる前で表立って暴力を振るうことはなくなったものの、見えないところに傷をつけられるようになった。
さらに、所謂精神攻撃のようなものは逆に頻度を増してしまった。
だから、やはりこの家に暮らし続けることは得策とは思えず、一刻も早くここを抜け出すことが俺の新たな課題となったのだ。
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わかめ(プロフ) - chacoさん» コメントありがとうございます。そこまで言って頂けるとは…今心臓がものすごくバクバク鳴ってます！笑 引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年6月10日 20時) (
レス) id: ebf6dbcbb7 (このIDを非表示/違反報告)
chaco(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。本当にこのお話が面白くて、書籍化して手元に置いておきたいくらい大好きです。毎日更新楽しみにしてます。これからも頑張ってください！ (2020年6月9日 22時) (レス) id: c6e12b87e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年6月3日 0時
