結局僕だけ ページ4
ru side
nb「そういえばさ、何でさっき、あんな目配せしたの？」
渡辺さんにそう聞かれて口籠る。
彼にだけは言ってはいけない。だってあれは、言うなれば最後の悪あがきのようなものだったのだから。
僕はずっと、皆が口々に夢、夢と口にするのが不思議で仕方なかった。
夢ってそんなに大事なものだったっけ。そんなに支えになってくれるものだったっけ。
夢なんて悠長なことを言っていられるのは、小さな子どものうちだけなんじゃないの？
しかし、夢という言葉をキーワードに変わっていく皆の姿を見ていれば、僕も嫌でも夢の持つ力を認めざるを得なかった。
ただ、それは同時に夢のない自分を否定することでもあり、考えれば考えるほど辛くなった。
だから、夢なんて簡単に壊れてしまうものなのだと証明したくなったのだ。
僕がそのちょうど良い手段として選んだのが、渡辺さんの行く末を佐久間さんに託すことだった。
もっとストレートに言えば、佐久間さんが取り乱して場を台無しにし、渡辺さんの夢を潰すことを期待していた。
我ながら最低だとは思うけれど、その誘惑に負けてしまうくらいには、僕だけが取り残されたようなこの感覚に耐えられなかったのだ。
しかし、結果は僕が予想していたものとは180度異なっていた。
そしてそれは、ますます僕を惨めな気持ちにさせた。まるで、2人を試した罰が当たったかのようだった。
「…うーん、あの時の佐久間さん、前に取り乱した時とは少し違う表情をしていたような気がしたから。
何か、もっと別のことが起こるんじゃないかなって思って」
しかし、その時僕の口をついて出た誤魔化しの言葉は、果たしてまるっきりの嘘だったのだろうか。それとも…
nb「確かに言われてみれば、怒ってるとか怯えてるとかって感じじゃなかったかも」
心の奥底では、僕もそのことに気がついていたのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 588人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わかめ(プロフ) - chacoさん» コメントありがとうございます。そこまで言って頂けるとは…今心臓がものすごくバクバク鳴ってます！笑 引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年6月10日 20時) (
レス) id: ebf6dbcbb7 (このIDを非表示/違反報告)
chaco(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。本当にこのお話が面白くて、書籍化して手元に置いておきたいくらい大好きです。毎日更新楽しみにしてます。これからも頑張ってください！ (2020年6月9日 22時) (レス) id: c6e12b87e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わかめ
| 作成日時：2020年6月3日 0時
