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ab side
『…ごめん』
しかし、やはりというべきか、兄は俺の姿を見るなり逃げるように部屋へ戻ろうとした。
「兄ちゃん待って！」
『…っ』
必死に呼び止めたのも虚しく、兄は俺の横をすり抜けて去っていく。
その表情はすごく苦々しかった。
それも当然だろう、兄にとって、俺たち家族はきっと信頼に足る人間ではなくなってしまったのだから。
しかし、階段を登る兄の姿が見えなくなるその一瞬手前で、彼が俺に何かを訴えるように振り返ったように見えた。気のせい…ではなかったと思う。
けれども、思いがけない兄との再会に動転していた俺には、そこに込められた兄の思いを読み取るだけの余裕はなかった。
(俺、今まで兄ちゃんにどれほどの傷を負わせたんだろう)
自分の部屋に戻ってからも、さっきの兄の悲壮な姿が頭から離れず、ますます寝付けなかった。
しかし、こんな真夜中にグダグダ考えたところで、マイナス思考の波にのまれるばかり。
いつしか俺は、その心細さに耐えられなくなり、柄にもなく無性に誰かに頼りたくなった。
…百歩譲ってそこまでは仕方なかったとしよう。
だとしても、何でこんな時に限って俺は、数あるアドレス帳の中から目黒さんの名前を選んでしまったのだろうか。
彼が事情を知る「仲間」だから？
起爆剤の話をしたから？
それとも、俺を一喝してくれそうだったから？
それとも…？
「俺、もう自分が嫌になる」
何も考えられない頭で、そんなメッセージを1行だけ。
しかし、送ってしまった後で、俺はどんな構ってちゃんかメンヘラかとまた自己嫌悪に陥る。
まあ、こんな深夜だし、返事だってくるはずはない。
朝になってスッキリした頭で、また言い訳を考えればいい。
俺はそうたかを括って、携帯を床に放る。
しかしその直後、聞こえるはずのないバイブ音が聞こえて来た。
しかもこの長さ…電話？
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わかめ(プロフ) - chacoさん» コメントありがとうございます。そこまで言って頂けるとは…今心臓がものすごくバクバク鳴ってます！笑 引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年6月10日 20時) (
レス) id: ebf6dbcbb7 (このIDを非表示/違反報告)
chaco(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。本当にこのお話が面白くて、書籍化して手元に置いておきたいくらい大好きです。毎日更新楽しみにしてます。これからも頑張ってください！ (2020年6月9日 22時) (レス) id: c6e12b87e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年6月3日 0時
