なんて美しい景色でしょう ページ1
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(ああ、やっぱり、歌うのって幸せだ…)
自分でもここまでとは思わなかった。
こんなにも、歌に魅了されていたなんて。歌に魂を持っていかれていたなんて。
dt「翔太は素直すぎるから」
いつだったか涼太が俺に向かって放った言葉を思い出す。
上手に隠してきたつもりだった歌への思いも、ひとり家族になりきれなかった惨めさも、それでも必死に強がってきた苦しみも、きっとあいつには全部バレていたんだ。
俺ばかりあいつを気にかけていたつもりでいたけれど、あいつは俺以上に、俺のことを心配してくれていたんだ。
でも、涼太は決して俺を必要としていないわけじゃない。一緒に歌えばわかる。
だから、お互いがお互いのことしか見えなくなっていた閉じた世界から抜け出して、これからは同じ方向を向いて歩いていくんだ。
昔々、あの道を並んで歩いた時のように。
だからもう大丈夫だ。
たとえ一瞬お互いの姿が見えなくなったとしても、俺は俺の進むべき道を行けばいい。
そうすれば、手を伸ばしたところに絶対に彼はいる。そして、いつかまた、彼と並んで歌える日が来る。
俺は、今まで悩んでいた何もかもを振り払うように、音を奏でた。
その旋律に寄り添うように重なった涼太の歌声は、まるで優しく見守ってくれているようで、時には相槌を打ってくれているようで、もうどっちがお兄ちゃんだよ…なんて思わなくもなかったけれど、それでも俺は幸せだった。
そんな時目に入ったのは、目の前でゆらりと立ち上がる佐久間さんの姿だった。
無意識なのか、目は開いているのにどこか別の世界に行ってしまったような彼の佇まいに、一瞬びくりとする。
また取り乱すんじゃないか。この歌が何かの引き金になったか…？
しかし、その心配は杞憂に終わった。
彼は、まるで大きな羽を持つ鳥のように、伸びやかに踊り始めたのだ。
その瞬間、俺の歌がもっともっと鮮やかに色づいた気がした。
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わかめ(プロフ) - chacoさん» コメントありがとうございます。そこまで言って頂けるとは…今心臓がものすごくバクバク鳴ってます！笑 引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。 (2020年6月10日 20時) (
レス) id: ebf6dbcbb7 (このIDを非表示/違反報告)
chaco(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。本当にこのお話が面白くて、書籍化して手元に置いておきたいくらい大好きです。毎日更新楽しみにしてます。これからも頑張ってください！ (2020年6月9日 22時) (レス) id: c6e12b87e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年6月3日 0時
