死後の世界で出会った僕たちは2

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ab「さっきの俺の過去の話だと、父親のために嫌々医者になったように聞こえたかもしれないけど、違うんだ。医者になるのは俺の昔からの夢で…
大きなやりがいを持って働いてたし、患者さんが笑顔になってくれると本当に嬉しくて、天職だとすら思ってた。
俺も、仕事にかける思いは岩本さんと同じだったんです。なのにどうして、俺だけがそれを奪われなくちゃいけなかったんですか？」


もちろん岩本さんがそれに答えられるはずもなく、部屋には阿部さんの少し低めの声だけが響く。

ab「あんな惨めな思いをするくらいなら、最初からそんな夢見ない方がマシです。でも、生き返ってしまったらきっとそれは出来ないから…
だったら、新たな人生で、新たにやりたいことを見つけようって思っちゃうじゃないですか」

彼はそういうと、また先程とはうって変わった切ない顔で天を仰いだ。


(また、夢…)
深澤さんや岩本さん、向井さんあたりがキラキラした夢を語っていたのも確かに応えた。
しかし、失礼ながらどこか屈折したように見えていた阿部さんですら、そんなしっかりとした夢を持っていたなんて…
そのことは、夢を忘れてしまった僕をさらに憂鬱な気分にさせた。


そして、後で知ったことだが、この場には僕と同じように「夢」というキーワードに複雑な思いを抱いていた人が、他に2人もいたらしい。

nb「夢、か…」
sk「夢、ねぇ…」

そう、9人の中でも最も小柄な、この2人である。


しかし、2人の小さな呟きは、誰にも気づかれることはなかった。
何故なら、あの男がこの重い空気を一掃するような発想力で、見事に話題をさらっていったからだ。

mg「てか今思った。通り魔事件自体が起きないようにすれば、さっきからの話全部解決すんじゃね？」

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