死後の世界で出会った僕たちは (ページ39)

今日:9 hit、昨日:23 hit、合計:404,474 hit

倒錯する記憶ページ39

dt side

sk「あの、宮舘さん、どうしてそんな冷静でいられるんですか。貴方の事故の原因が、すぐ隣にいるっていうのに！」

佐久間さんは、俺の態度が理解しがたい様子でそう言い、翔太を睨む。
翔太は目を伏せるばかりで、反論する気もないようだった。

あれだけ酷い目にあって、それでもなお自分を責めている翔太を見るのは辛い。
だから、「翔太のせいじゃない、あれは不運な事故だ」と言ってあげたかった。
でもそんなことを言ったら、翔太はますます傷ついて、自分のことを責める気がしたから、言えなかったんだ。

ru「でも渡辺さんだって、宮舘さんに苦しめられてきたわけだし…」
そう、そちらの方が問題だ。

nb「いや、涼太は悪くないよ」
しかし、俺が翔太に言いたかった言葉は、逆に翔太から俺に向けられてしまった。
いくら弟だからって、あいつは俺に甘すぎる。

ところで話は戻るが、自分の冷静さを誰よりもを不思議に思っているのは、他ならぬ俺自身だった。
さっきまで、死の原因が目の前にいたら絶対に普通ではいられないと思っていたのに…何故今、俺はこんなにも穏やかな気持ちなのだろうか。

ab「俺は何となく分かりますよ。
誰かを傷つけてしまった分、自分も苦しまなきゃいけないって思うのとか、一方で、この世界に来られてちょっと安心してしまう感じとか。
もちろん、佐久間さんや岩本さんみたいに、生きたくても生きられなかった人には怒られちゃうでしょうけど…」
sk「俺はそんな…いや、何でもない。確かにそういうこともあるのかもしれませんね」

阿部さんの言葉は、まさに俺の気持ちをピタリと言い当てていた。
それもそうか、彼もまた、兄弟が苦しむ姿を間近で見ていた人間なのだから。

なんとなくだけれど、そうやって痛みに共感したり分け合ったり、あえて反対の立場から苦言を呈したり、そう言うことが出来る境遇の人どうしが集められて「仲間」となっているのではないかと、そんな風に思った。