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目を開けると、幻覚が見えた。
小山と肩を並べて観客を見つめる金髪色の横顔。
"苦しくて苦しくて涙 流れたなら
悲しみは悲しみで 終わりじゃないんだ"
増田が歌い忘れて、
見兼ねたファンが歌い出す。
短く響いた無音がやけに長く感じた。
増田加藤「「想像もできないくらい感情を握りしめて」」
増田は自分が歌い忘れたことに気がついていなかった。
俺たちには同じ幻覚が見えていたんだ。
ちゃんと聞こえていた。彼の歌声が。
2度目のサビを歌い終わり、
エレキギターの鳴る音が天井を突き抜ける。
潮風に似た爽やかな風が頬を撫でた。
そして目を見開いて、俺は大きく息を吸った。
加藤「立ち止まっていたとしたって」
加藤「夢は終わりじゃなくて」
今までにないほど喉が締め付けられる感覚が襲って
自分の声が何度も震える。
イヤモニから聞こえるはずの声が聞こえない。
俺の声しか、いなかった。
"置いてかれた"
"どっか行くとか聞いてねえ"
"4人で頑張るって誓い合ったじゃねぇのかよ"
"俺また嘘つきになっちゃったな"
限界を超えて溢れ出した想いが
胸の中でぐちゃぐちゃと渦まく。
加藤「さすらいの果て」
加藤「何を問う、ッ」
加藤「自分ッだけのたび」
手越のパートを自分が歌う日が来るなんて。
この曲は特別だと誰もが思う。
呼吸につまずいて、メンバーと目が合う。
まっすーが心配そうに見つめてきて、
小山が悲しそうに目尻を緩ませる。
いまだって
俺はひとりじゃないのに
何ひとりぼっち見たいな感情で歌ってるんだ俺は。
3人「「「追い込まれたって前へ 君だけにある明日へ」」」
3人「「「願いを込めた フルスイングで」」」
NEWS「「「フルスイングで」」」
前を向いて未来へ行こう と決めたはずだ。
こんなにも味方は沢山いるんだから
俺はもう落ち込んでる暇なんてない。
やるべきことをやる。
それだけを
ただ、がむしゃらに。
増田「桜のような君でした」
決別。
さようなら
俺たちの花びら。
またいつか会いに行くから
会えるようになるまで頑張るからさ
どうか待ってて欲しい
俺はまだこんなにもキミを忘れられない
忘れられたらきっと会えるようになる
忘れなきゃ会いに行けない
だから
それまではそれぞれの道を進もう
背中合わせでもいい
それだけで伝わることもある
愛し合った思い出は
ずっと
消えることはないのだから
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作者名:白うさぎ | 作成日時:2020年12月10日 0時