声の音オルゴール (裏なし) ページ3
.
｢成亮さん、？｣
書斎から出てこなくなって3時間が経った。
そろそろご飯食べに来るかなーと思って
ちらりとドアを覗く。
案の定、机に突っ伏して眠る彼がいた。
…お疲れ様なのかな。
昨日も一昨日も撮影で。
日々のお仕事の内容はあまり聞いてないけれど。
疲れて帰っても、家で待ってるのは執筆作業。
さすがに一緒に住んでる私も心配になる。
一旦引き返して、
寝室からブランケットを持ってきた。
成亮さんの肩にかけてあげる。
｢…んっ、｣
｢あ。ごめん、起こしちゃったね、｣
｢んーん。…寝てた。｣
｢うん。寝てたね。｣
寝起きのいつもより低い声。
彼のぼんやりした眼につられて、
私の声も自然とゆったりした囁き声になる。
｢Aは…？｣
｢ん？｣
｢…いや、なんでもね。｣
｢？｣
顔だけ動かしてこちらを見たが、
すぐにうつ伏せに戻ってしまった。
私は｢なんでも言ってね｣と小さく声をかけ、
彼の肩に手を置く。
逞しくて厚みのある、男の人の身体。
｢…Aのその声、眠くなる。｣
｢ふふ。眠くさせたいもん。｣
｢やだよぉ。まだ再校終わってねぇもん。｣
｢ならちょぴっとだけ休もう？｣
｢んー…｣
｢あと、｣
｢？｣
｢肘でキーボード押しちゃってるよ｣
｢えっ｣
画面に映し出された
無数のアルファベットの羅列を見て焦る成亮さん。
｢うわ何だこれ｣って言いながら
back spaceを連打している。
相変わらずドジってて可愛い。
そんな彼を、横からぎゅっとしてみる。
ブランケットの上から抱き着いて、
身体を温めるみたいに寄り添う。
彼の頬に 自分の頬を寄せて、
一緒にPCの画面を見つめた。
｢…ん。おっけー戻せた。｣
｢うん。よかった。｣
何事も無かったみたいに離れようとしたら、
触れていた腕をぐっと引き寄せられて
また彼の左頬に自分の右頬が触れる。
今日は甘えたさん なのかな？
｢んー？｣
様子を伺うも、
彼は｢んーん。｣とだけ返して目を閉じた。
私は黙って彼の髪を撫でる。
ゆるくかけられた黒髪のパーマが指に絡んでいく。
｢……落ち着く。｣
何気なくこぼした成亮さん。
つい落っことした、みたいな声色で
こちらも頬がゆるむ。
こうして甘えてくるときは、
不思議と年上に見えなくなるから新鮮だ。
くっつく肌を離して、
温もりの残る頬に触れるだけのキスを落とす。
耳を赤く染めた彼がゆっくりと振り向き、
優しく唇を塞いだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白うさぎ | 作成日時：2020年12月10日 0時
