禁止令 ページ22
.
(side WHITE)
ずきずき、なんてことはなく。
正直、なんの自覚症状もない。
でも、
「…あかん」
重「…なんで」
「なんでも」
重「……」
近付いた唇を手のひらで制止する。
そんなにぶすくれたって、あかんものはあかん。
ぐでんと私に凭れる彼は思いっきり不貞腐れて、不満たっぷりにじーーっと見詰めてくるから、申し訳なくなってくる。
重「もう手遅れやって」
「そんなことないもん、しげちゃんはまだ助かる」
重「助からんでもええからキスしたい」
「あーかーん」
重「なあーーーなんで虫歯なんかなってん」
「私が聞きたいわ」
歯磨きだって、ちゃんとしてるし。
歯医者さんだって、定期的に行ってるし。
……定期的に行ってるからこそ、自覚症状のない状態で見つけて貰えたんやけど。
虫歯菌はキスで移るって、よく聞くから。
赤ちゃんにだってそうらしいし、ましてやこんなに歯を大切にしてるしげちゃんに虫歯菌を与えるわけにはいかへん。
キスしたいのは、山々やけど。
なんて考えている間にも無計画な唇が迫ってきて、また手のひらで押し返す。
がぶ、って手のひらを噛まれた感覚がして思わず手を引けば、にんまりと弧を描いた誘惑がまた迫ってきた。
「もう！あかんって！」
重「軽いキスでは移らんらしいで？」
「そんなん分からへんもん」
重「わかったほんなら唇閉じとくし」
「いちばん信用できん」
重「なんでや！」
いちど触れてしまえば、開くも閉じるもしげちゃん次第で、こじ開けられてしまえば私に為す術なんて無い。
それを分かっていながらこんなことを言うのだから、憎たらしくて彼の頬をぺちぺちと叩いた。
「私も我慢するからしげちゃんも我慢して」
重「…いつ治んねん」
「クリーニング入れて5回ぐらいとは言うてはったけど」
重「1週間？」
「毎日行かす気か」
む、と無意識に尖った唇を彼が狙う気配がして、思わず口元を手で覆えば、手の甲に柔らかな感覚が触れた。
重「はよ治せよ」
「はあい」
重「溜めとくから」
「…キスを？」
重「キスとか、色々」
「……え、それも禁止？」
重「当たり前やんけ、キスしたなるわ」
「……、」
重「この世の終わりみたいな顔すんなw」
「…週5で行こかな、」
やめとけ、って笑いながら「ハグも禁止な」なんて告げた彼のおそろしい一言で、地獄の1ヶ月を過ごす羽目になった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 844人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
竜胆(プロフ) - Rさんさん» こちらこそ、読んでくださってありがとうございます。重岡逃走中、書きたいなとはむちゃくちゃ思ってます。予定は未定ですけれど、いつか書きます。少しばかりお待ち頂けますと幸いでございます。 (4月6日 19時) (
レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
Rさん(プロフ) - いつも素敵なお話ありがとうございます。リクエストなのですが。重岡逃走中が大好きで重岡逃走中のお話書いていただきたいです。できればで大丈夫です。よろしくお願い致します。 (3月26日 9時) (レス) id: a98349d762 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 亜由さん» コメントありがとうございます、いつも読んでいただいて嬉しいです。リクエストに関しまして、お応えしたい気持ちは山々なのですが、件の彼について情報をあまり持っておらず表現に不足が出そうなので、今回は見送らせてください。またリクエストお待ちしています。 (2月16日 9時) (レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
亜由 - 遅くにすみません｡小説読みました。リクエストなんですけど、厨房のありすに主夢が永瀬君の恋人役に決まった事をマネージャーがメンバー皆が居る所で言っていたら永瀬君が楽屋に来たお話を書いてもらえませんか？ (2月16日 5時) (レス) id: 056f326efc (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - eapoiraile18さん» コメントありがとうございます、新鮮さ感じてくださって嬉しいです。本当にたまにですがメンバー以外の第三者目線のお話もあるので、楽しんで頂けますと幸いです。 (2月13日 21時) (レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：竜胆 | 作成日時：2024年1月21日 2時
