秋です。 ページ10
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(side RED)
「しげちゃん、大変」
重「どうした」
「食欲の秋や…」
重「肥えたんか」
「デリカシーという！ものを！」
重「www」
彼女が神妙な顔つきでぽつりと零した言葉は、俺の記憶が正しければ去年にも聞いた覚えのある言葉。
確か一昨年にも、その前の年にも同じようなことはあって、秋の恒例のような。
重「最近食うた美味いもんは？」
「月見バーガー」
重「あっお前ひとりで食うたな！？」
「しげちゃんは！仕事やったもん！」
重「ずっっこ、肥えて当然やんけ」
だからといって、ほんまに肥えたなと思うこともないし、むしろどこが肥えてんのかわからんくらいの誤差ではあるんやけど。
本人からすれば気になるんやろうし、そうは言わんものの、別にそんなん気にせんとよおさん食えばいいのに、っていうのが本音。
「もう夏服着いひんからって油断してな…、」
重「別に腕なんか太なってないやん」
「毎日見すぎて分からへんのやわ」
重「…そういうもんか？」
「何食べても美味しいし、いっぱい食べちゃうし…」
重「年中そうやんけ」
べし、と飛んできた優しい掌を甘んじて受けながら、隣に座る彼女の足先からゆっくりと視線を上げていけば、途中で掌に目元を覆われた。
胸元くらいまで見つめた結果から言うても、やっぱり、太ったとこなんか欠片も分からん。
「むっちゃスケベな目してた」
重「なんでやねん、純粋な目やったやろ」
「いやもう、色々透けてんのか思うほどスケベな顔」
重「透けてたで」
「やめてww」
重「上下揃ってピンクやろ」
「ざんねん赤ですーー」
重「ほお、今日は赤か」
「…！、スケベ！」
スケベ知能犯！って変なあだ名つけられて、太腿がぱしぱし叩かれる。
なんやスケベ知能犯て。
ぽろっと言うたんはそっちやろが。
重「ええやん、季節関係なく沢山食うたらええねん」
「もー、太って抱っこできひんぐらい重くなるかもしれんのに」
重「ほんなら俺が鍛えとくから安心せえ」
「でも私にはしげちゃんという強い味方がいるから」
重「…俺？」
「秋は食欲だけじゃないもん」
…、？
話の流れが読めず、きょとんと首を傾げた俺に、彼女がちらりと寝室に視線を投げて悪戯に笑う。
「一緒に運動しよ、しげちゃん」
重「……お前そんなんどこで覚えてきてん」
スケベはどっちや、と思いながら、俺より随分と軽い身体を抱き上げた。
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
