白と黄 ページ44
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(side YELLOW)
メンバーの可愛いと思うところを教えてください。
照史が書いていたアンケートを開いて、思案する。
そりゃ勿論全員にそれぞれ可愛いところも素敵なところもあって、でも言えるものも言えへんものもあって。
姫さん相手では、言えるものか言いたくないものか、に分ける方が正確かも。
俺だけの心に秘めておきたい可愛さも、教えてあげたい可愛さも、どちらもあるから。
今回のアンケートに記すのは、教えてあげたいもの。
重「淳太ちょおこっち来て」
中「待って、いまアンケートしてるから」
「淳太くーん」
中「はいはい、すぐ行く」
重「俺が呼んでも！来いよ！！」
「あはは、」
笑顔、声のトーン、所作、挙動。
全てが可愛らしい彼女が、今までで一番の"可愛い"をくれた、20歳の記念に行ったディズニーの話を出す時が来たかな。
20歳になる少し前。
二十歳のお祝い何がいい？って何気なく聞いた俺に、その時期ドラマに舞台にと多忙を極めていた彼女は少しの間を置いてからぽつりと「時間」って答えて。
思わずその言葉を反芻した俺を見ながら「たのしい時間」って微笑む。
笑顔に隠した疲れが少しだけ滲むのに気付いてしまった俺は、癒したい一心ですぐに「ええよ」って答えた。
少しして、一段落というにはまだ過密なスケジュールだったけれど、ほんの少しの隙間を縫うように揃えたオフで組んだ予定はやっぱり、俺らの大好きな夢の国。
「…はぁ、ディズニーの空気、おいしい」
中「今日は端から端までおもてなしやから、遠慮せんと羽根伸ばし」
「うん、今日は淳太くんに楽しませてもらいに来たから」
中「はは、張り切っておもてなしするわ」
「じゃあ、」
はい。
って言葉と共に俺の前にAのスマホが差し出されて、思わずきょとんとする。
ん？って首を傾げたら、ん、って頷くから、不思議に思いながらスマホを受け取った。
「もってて」
中「…ええけど、手元になくていいん？」
「うん、今日の私はぜんぶ淳太くんにあげる」
中「…へ、」
「だから見る暇ないくらい楽しませてな」
中「…ええよ、任せて。僕を信じろ」
「ふふ」
まるで魔法の絨毯に乗ったような。
ふわついた高揚感を抱きながらAの手を取ったあの日を想うと、今でもにやけてしまう。
…やっぱり、これは秘密のままに。
あの日のAは、俺だけのジャスミンやから。
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
