ほろよい ページ26
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(side RED)
気の知れた友人との食事の時間。
最近仕事は、休みは、なんやかんやと日常を話す中で、彼女の話題になる。
今日はお互い仕事で、アイツの方が遅いから会う予定はなくて、多分、そろそろ。
少しだけ話して、話題を変えた。
食事もそこそこにアルコールの香りをふわりと纏いながら店を後にして、
少しだけ皆で外を歩いてから、ひとりになる。
重「…もしもし？」
『はあい？』
重「いまなにしてんの」
『今ね、おうち帰ってきたとこ』
重「ん、そうか」
とん、とエントランスの段差を越えてから、警備員に会釈して慣れた顔でオートロックを通る。
エレベーターが降りてくるのを待ちながら、酒に火照った頬を掌でざらりと撫ぜた。
「しげちゃんは？」
重「ん、俺、飲み終わって帰るとこ」
「そっか、もうお家つくん？」
重「おん、そろそろ」
「すぐねる？」
重「ん？」
「逢いたいなぁ」
思わずニヤついてしまう程に俺を甘やかす愛しい声は、甘えたな俺の心を読み解いてやさしく先回りする。
…なんで分かるんやろ、こいつ。
いや、読み解いて先回りされているのか、それとも本当に思考回路が重なっているのか、それは分からへんけど。
重「まだ寝えへん」
「そ？じゃあ会いに行こっかな」
重「もう夜遅いやろ」
「…あ、イヤなん」
重「ふは、嫌ちゃうって。嬉しい」
「もお」
ゆっくりと開いたエレベーターから降りて、廊下を少し歩く。
拗ねたような声に小さく笑えば、怒ったフリする声が可愛らしく耳元に響いた。
俺、コイツが「もお」って言うの、むちゃくちゃ可愛くてほんまに好きやねん。
なんか、困らせたくなるというか、好きな子ほどイジメたいというか、いやまあイジメたりなんか欠片もせえへんねんけどさ。
「タクシーで行くから、危なくないよ」
重「タクシーの運転手が何かしよるかもせんやろ」
「もう、考えすぎ」
重「ちょお、ドア開けて」
「……うん？」
少しの沈黙と、電話越しに聴こえる軽やかな足音。
耳元とドアの向こうの音が重なってすぐ、開いた扉から彼女が顔を覗かせた。
「…わ、」
重「…来ちゃった、てやつ」
「あは、嬉しい、逢いたかった」
重「俺の方が先に逢いたかったし」
「ふふ」
照れくささに余計と赤らんだ頬を撫でる彼女の掌にキスをして、雪崩るように抱き締めながら後ろ手にドアを閉めた。
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
