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(side RED)
ペットボトルのキャップを締める俺を見たAが目を見開いて、不思議に思うと同時に、無意識に零れた涙に気付く。
…泣きそうに、どころではなかったらしい。
珍しく慌てた様子を見せたAは、ハンカチを取りに戻ろうか悩んだ末、綺麗な指先で俺の頬を撫でて。
ずび、と眉間に皺を寄せながら鼻を啜る俺の顔を心配そうに覗き込むから、力任せに抱き締めた。
「っわ、」
重「ごめん、」
「どうしたん、」
重「…ごめん、俺、」
「しーげ、」
首元に顔を埋めたままくぐもった声で告げれば、優しい手が髪を撫でた。
片方は俺の髪を撫でて、
もう片方は、俺の腕を優しく摩る。
重「…なんで抱き締め返してくれへんの」
「…自分が何言うてるか分かってる？」
重「分かってる、ええから抱き締めてくれや、」
「…もう、しげちゃんが言い出したことやのに」
重「しらん、コッチはお前のこと好きすぎて泣いとんねん」
「あは、なにそれ」
はよ、って我儘にも催促すれば、はいはい、って宥める声と共に大好きな腕が俺の背中に回る。
とんとんと背中を叩く温もりに余計涙腺が刺激されて、ぐずぐずに泣きながら思いっきり閉じ込めた。
重「…ほんで、あのマグカップ神戸で買ったやつやから、もうたぶんその店自体無くて、な」
「そっか、じゃあ新しいの無いんや」
重「…せやし、なんか代わりのやつ買ったるから、」
「…から？」
重「……ゆるして？」
「ふふ、あかん」
重「だあー！なんでや！」
「甘い甘い」
ぎゅうぎゅうに抱き締めて、渾身の上目遣いでお願いするけど、天使の可愛さには到底勝てんくて。
俺の事を甘いと言うわりに随分と気を許した表情をするから、俺は調子に乗って唇を近付けて、そして避けられた。
重「…避けんなやぁ」
「まだ許してないもん」
重「……どうしたら許してくれるん」
「…どうしたらいいとおもう？」
重「んん、かわいい」
「ふふ、そんなんちゃうの」
重「本気で言うてんのに」
だってそんなん、何年も前にあげたプレゼントなんか、覚えてへんて。
貰った方はすぐ思い出せるけど、あげた方は結構忘れたりするやん、って彼女の首元で小さくぼやいてみれば、「それはいいの」って優しい声が響く。
「私もどんなんあげたか覚えてないもん」
重「…じゃあ、何怒ってんの」
「なんやろな？」
重「意地悪すんなって！」
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
