おあずけ ページ3
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(side RED)
顔の半分くらいまでお気に入りのクッションに埋もれて。
キスさせる気なんか、1ミリも無い。
…たぶん。
重「…あんまりじっと見んなやぁ、」
「2話は一緒に観る言うたん、しげちゃんやん」
重「せやけど、」
「心配せんでも、もう普通に見れんのに」
重「それもそれでやな、」
「ほらもう、観てるから静かにして」
隣でぶすくれたって見向きもせん彼女の視線は、テレビに釘付けで。
キスシーンどころかシャワーシーンだってあるし、その後もちょっとあるし、コイツの嫉妬スイッチなんてものは有り余るほど詰め込まれてるんやけど。
なんせいつも妬いてくれよるんは1話か2話までで、今回はもう随分とこの役を演じる俺にも慣れてしまいよったらしい。
ソファに横並びで座っているのに、手を出したらきっと怒られてしまうこのもどかしさ。
少しだけ距離を詰めれば、ちらりと視線が俺に向いて、またテレビへと戻った。
重「なあ、こっち向いて」
「CMなるまで待って」
重「今が！いい！」
「あかん、今ゆりちゃんが可愛いから」
重「かわいいしげちゃんが呼んどんねんぞ」
「もう、大人しく待ってて」
ぱ、と俺を向いたAに驚いた隙に、優しく奪われた唇にぽかんと口が開いた。
触れた唇から、火なんかすぐに点いて。
またクッションを抱き締めてじっと画面に見入る彼女の耳朶へと唇を寄せれば、少し傾いた体に避けられてしまった。
…くそ、察しがいい。
重「…なあ、」
「あは、しげちゃん噴き出し方うま、」
重「なあって」
「もお、なぁに」
視線は寄越さへんくせ、伸びてきた手は俺の頬を撫でて輪郭をなぞる。
魔性の指先が耳朶を擽るから、吸い寄せられるように彼女の首筋へキスをした。
「…あ、CM」
重「よしゃ、ベッド行こ」
「あほ、CM明け見れへんやん」
重「…俺もうその気やねんけど」
「しげちゃんの演技すきやから、最後まで観たい」
重「……そんなん、言われたらぁ」
眉を寄せて黙り込んだ俺を、ようやくこっちを向いたAがわしゃわしゃと撫で回す。
お預け食らわせたかと思えば撫で回して、扱いとしてはまるで犬のような。
かと思えば、シャワーシーンでおもむろに俺の手を握って恋人繋ぎしてくるあたり、ずるくて愛しくて仕方がない。
「しげちゃんの背中すき」
重「見る？」
「…すけべ」
重「まだなんも言うてへん！」
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
