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(side RED)
撮影終わったら行こうな、って言う照史に頷いて、順番に撮影に向かう。
同じタイミングでAを連れ出していた神ちゃんは、Aがおらんくなったタイミングで俺と照史に向かってごめん！って手を合わせながら眉を下げた。
神「何があったん、って聞いてんけど」
桐「あかんかった？」
神「しげちゃんに筒抜けやろ？言わへん、って笑って流されてもたぁ」
桐「手強いなぁ」
重「……みんな、ありがとうな」
仲直りせえへんって強がりを、強がりやと分かってくれるメンバー達が俺とAの仲を支えてくれて。
Aが怒って俺を突き放す時は、いつも通りを装ってカメラが回ってなくても目も合うし話もするけど、
俺が怒って突き放した時のAは、いつも通りを装うのがとびきり下手になるんやと初めて知った。
会話もなければ視線さえ合わん今を、彼女が乗り越えてしまう前に。
俺との関係が、ただのメンバーに変わる前に。
藤「しげ、交代ー」
「照史くんもー」
桐「はいよー」
重「…あ、A、後で話ある」
「…うん、わかった」
俺と同じだけの間を持って、こくんと頷いた彼女はまたすぐに俺から目を逸らす。
びりびりと痛む心は、撮影に挑むには傷みすぎて。
ただでさえ好きな女と目も合わず、会話もせず。
触れることなんて以ての外で、このまま複雑な心境を抱えて過ごすのは苦しい。
…その好きな女に別れを告げたのは、俺なんやけど。
怒りに任せて俺が言うたことやけど、それでもやっぱり、苦しい。
重「…なあ、」
「、ん？」
重「撮影行ってくる」
「…うん…？」
ほんの少しの期待を込めて、Aを見つめてみた。
久しぶりに目合ったなあ、って、不思議そうに俺を見つめ返す綺麗な瞳に想う。
重「……、」
「…行ってらっしゃい？」
重「、ん、行ってくる」
「ふふ、合ってた？」
重「ん」
「うん、行ってらっしゃい」
俺が本当に欲しいタイミングで、俺が欲しい言葉を、お前が間違えるはずない。
それくらい一緒に居て、同じ時間を過ごしてきたやろ。
仕事以外で久しぶりに向けられた笑みはとんでもなく輝いていて、やっぱり好きやなあ、って改めて思った。
…だからこそ、耐えられへんことだってある。
やから、撮影終わったら勇気振り絞ってあのマグカップの真相を聞くぞ。
俺に嘘は、言わへんと思うから。
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
