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(side RED)
"しげちゃん、起きて。"
聞こえた声にゆっくりと瞼を開ければ、濱ちゃんが眠る俺を覗き込んで起こしてくれていた。
…Aの声に、聞こえた気がした。
濱「撮影、そろそろやで」
重「…ん、おれ何分寝てた？」
濱「え？見てへんかったわ、15分ぐらいちゃうか？」
重「…Aは？おらんの？」
中「さっき出てったで」
重「……あ、そ」
…俺のこと起こさんと、放って行ったんや？
…拗ねる理由なんかないけど、吹っ切れるんが早すぎるんとちゃうん。
女は別れた男に未練がないとはよく聞くけれど、この身で体感するとちょっとだけ、
……いや、ヘコむ理由もないけどな。
桐「喧嘩したか知らんけど、はよ仲直りしいや」
重「……せえへん」
神「しーげ、強がらへんの。」
重「せえへん言うたらせえへんねん、」
告げた言葉は自分で思うよりずっと拗ねた声色で、俺から別れを突きつけたくせにと自分に少し呆れる。
手櫛で適当に直した髪はまた後でヘアメイクさんに整えてもらうとして、一応の確認をと鏡を覗けば、鏡越しにAが戻ってくるのが見えた。
「…あ、起きてる…な？」
濱「おん、いま起こしたで」
「そっか、ありがとう」
重「…ありがとうて、別にお前の役目ちゃうやろ」
小「しげ、そんな言い方ないやろ」
扉から顔を覗かせて俺の姿を確認したAは、俺を起こしに戻ってきたらしく。
…なんや、ちゃんと俺のこと気にしてるやん。
せやろなあ、お前結構俺のこと好きやもんな、って言い聞かせるように思いながら、じゃあなんであのマグカップは、と結局そこに行き着いてしまう。
行き着いた先で口から出た言葉は棘たっぷりの低い声で、瞬時に反応した小瀧がじろりと俺を見た。
重「…なんやねん、」
小「なんぼ喧嘩してる言うたって彼女に対しての言い方やないやろ」
重「…彼女ちゃう」
「…、」
重「もう、別れたし」
小「……は、」
戸惑ったように小瀧が小さく声を零して、メンバーの視線をそれぞれに受けながら、Aが困ったように笑う。
信じられん、って顔に書いてある小瀧は俺を見詰めたままで、居たたまれんくなって目を逸らした。
…言うべきでは、なかったかもしれん。
言葉にしてしまえば、戻りづらくなることは想像に易かったのに。
ただ、裏切られた俺の痛みを、彼女も少し知ればいいと、思ってしまった。
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作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
