-2 ページ12
.
(side RED)
家に帰ってから、風呂あがり、寝る前。
謝罪のメッセージでもあるかと覗いたスマホは朝になっても、うんともすんとも言わんくて。
…まさか倒れたりしてへん、よな？
と思ったりするけど、こっちから連絡するなんて選択肢は無い。
だって悪いのはアイツやし、昨日別れを告げたのは俺で。
…いや、もしどうしてもって言うなら、言い訳くらい聞いたってもええけど。
なんてうだうだとひとり考え込んだ俺の心配に反して、Aはいつも通りに楽屋に現れた。
桐「おはよ」
「おはよお、ちょっと遅くなっちゃった」
中「まだ全然余裕あるで」
濱「流星まだやしな？」
「あ、そうなん？」
挨拶はおろか、目を合わせようともしない俺を照史がちらっと見て、なんとなく気まずくなって目を逸らした。
付き合ってすぐ、もし万が一この関係が崩れたとしても、ファンにもメンバーにも迷惑かけんようにいつも通りにしよう、って。
決めたのは、覚えてるけど。
……でも俺、そんなんでけへんし。
なんかあったら、"なんかあった"ってすぐ気付かれてまうのは昔から。
神「しげ？」
重「…ん？」
神「…喧嘩した？」
重「……してへん、喧嘩は」
神「喧嘩"は"、な」
喧嘩といえるような、ものではない。
ただ俺が一方的に怒って別れを告げただけ。
…言い訳も聞いていなければ、詳細を知っている訳でもない。
ただ俺が決めつけた仮定が、本当にそうやったとしたら、この長い年月でひた隠しにされていたその事実をまともに受け止められる自信がなくて、逃げるように彼女の部屋を後にした、だけ。
重「……悪ないもん、俺は」
神「そっか」
どっちを責めるでもなく、どっちの肩を持つでもなく。
小さな声で話す俺の言葉を静かに聞いてくれる神ちゃんの優しい声がじんわりと心に響く。
…悪ない、ってもう一度呟いて、不貞腐れながらソファに寝転んだ。
「…しげちゃん、寝た？」
神「ん、寝たよ」
「…うん、そっか」
少し寂しそうなAの声に頭が冴えて、瞼を閉じただけで眠れそうにはない。
なんとなく複雑な空気が漂って。
藤「……何？静かすぎん？」
中「お前wタイミングw」
それを打ち壊す流星の登場に場が和んで、有耶無耶になった空気は、またいつも通りに戻る。
起きるタイミングを逃した俺は、ゆっくりと眠りへ落ちていった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 838人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：竜胆 | 作成日時：2023年10月22日 19時
