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(side RED)
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2006.10.8
でかいドームでのオーディションに、少し緊張し始めた喉を潤そうとひとり向かった自販機の前。
俺より随分背の小さい女の子が財布片手にドリンクを見上げて立っとった。
少し間隔を空けて後ろに並びながら、軽妙な音を立てて自販機に吸い込まれていく小銭と、彼女がボタンに伸ばした手をぼんやりと見る。
1番上の列に陳列されたお茶を買いたいらしいけど指がギリギリ届いてなくて、攣りそうなぐらい伸びた足裏がそれ以上伸びられへんことを物語ってて。
…俺も割と人見知りやし、こういうの声掛けてびっくりさしたりするんもどうかと思うねんけど。
それでもせっかく居合わせたし、俺、届くし。
「…そのお茶、買うんやったら押そか?」
「…」
きゅる、と大きな瞳が振り返って俺を見詰めて。
うわ、なんやめっちゃ可愛い、と反射的に1歩下がってしまう。
お茶と、俺と。
交互に見て、彼女は伸ばした手をゆっくり引っ込めた。
「押して、」
「…おお、ええよ。このお茶でええねな?」
「うん」
ガコン、と音を立てて落ちたペットボトルを手に取って、「ありがと」と微笑む笑顔は子供っぽくて、可愛くて。
誰かの妹かなあ、なんて呑気に思てた。
まさかその後のオーディションで皆の前に立ってダンスの手本してるなんて、思わんやん。
しかも、息呑むぐらいキレッキレの。
隣に並んでるJr.とはちょっと歳離れてそうやけど、それでも引けを取らないくらいの。
空いた口が塞がらんぐらいの衝撃と、また違った最上級の高鳴りを胸に、絶対受かったろうって決めた。
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重「のに、や」
「ええ?」
重「ええ?やあれへん」
「なに」
重「お前と言うやつはほんま憎たらしなりよって」
「いつの話よ」
重「あの天使みたいなちっこいのんが今はもう悪魔超えて魔王やな」
「魔王て 性別変わっとるやん」
重「魔王女や」
「魔王女てなにww」
重「www」
「まぁなあ」
重「なんやねん」
「しげは昔から優しいよ」
重「…」
「はい急に褒められて照れるやつ〜」
重「うっさいわ!やめえ!」
「図星や!図星!」
重「覚えとらんていで喋っとんねんこっちは!」
「そら忘れへんよ」
運命の出会いって、ヤツ?
なんてにんまり笑う顔は、ガッチリハート掴まれてしもとる俺には天使にしか見えん。
とんでもない運命に巡り会ってもたわ、こんなん、一世一代の恋やんけ。
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亜由 - 楽しく読まさせて頂いてます。イブとクリスマスのお話が読みたいです。イブはシゲとクリスマスはメンバーと一緒のお話。 (2022年12月23日 16時) (レス) id: 056f326efc (このIDを非表示/違反報告)
竜胆(プロフ) - 亜由さん» 亜由さん、コメントありがとうございます。読んで頂けて嬉しいです、丁度本日書いていたので書き上げる活力になりました。ありがとうございます、それとお待たせしたようですみません。またお時間のある際に覗きに来て頂けると喜びます。楽しんで頂けますと幸いです。 (2022年12月20日 21時) (レス) id: 4b185b5ed0 (このIDを非表示/違反報告)
亜由 - 遅くにすみません。小説読みました。白と赤の日常のお話が読みたいです。 (2022年12月20日 3時) (レス) id: 056f326efc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:竜胆 | 作成日時:2022年11月17日 18時