大丈夫。弐拾玖 ページ32
義「A、この後時間はあるか?」
『まぁあるけど…どうしたの?』
義「俺の邸に来い。渡すものがある」
銀「はぁ!?Aは俺と帰るんだよ!」
いつの間にか人になった銀がまた義勇と睨み合う。私は銀と義勇の間に割って入り、銀を宥める。
『わかったから。銀は先に帰ってて」
銀「なんでだよ!」
『銀はいい子だからできるよね?』
銀「ぐっ…!ずりぃぞ、俺がその言葉に勝てないの知ってるくせによぉ…」
『すぐ帰るから。いい子にしてたらご褒美上げる』
銀の頭を撫でて、鴉に戻った銀を腕に乗せる。
銀「絶対ダカラナ!」
『はいはい。じゃあ後でね』
飛び立った銀を見送り、義勇と並んで邸に向かう。
『渡したいものって?』
義「邸につくまで待て」
『教えてくれたっていいじゃん』
結局邸につくまで義勇は何も話さず、私はわけも分からないまま義勇の邸に上がった。
義「これを、Aに渡したかった」
『これってさっきのお店で買ってた着物じゃ…』
義「お前はいつも男物の着物ばかり買うから…年頃の娘なんだ。少しはそういうものにも興味があるかと思って…嫌だったら、受け取らなくていい」
『そんなわけないよ…義勇からもらうものなら、何でも嬉しい』
私は義勇から渡された、可愛らしい紺色の着物を抱きしめる。
『これ…どうして私の好きな色が分かったの?』
義「昔、錆兎と三人で話していた時のことを思い出した。…今でも、この色が好きか?」
『好きだよ。錆兎と義勇に綺麗だって言ってもらえたから、今は私の瞳の色が大好き』
義「そうか」
義勇は満足そうに微笑むと、私を抱きしめた。
『義勇…?どうしたの?』
義「俺は…錆兎とお前に、幸せになってほしかった。俺ではAを幸せにできない。そう思っていたから。だが錆兎が死んで落ち込む俺に、お前は錆兎のように喝を入れてくれた。それで、錆兎がいない今、Aを守れるのは俺しかいないと思えたんだ」
『…』
義「あぁ…まどろっこしいのはもうやめだ。俺は、お前を好いている」
思いがけない義勇の言葉に、思わず固まってしまう。
義「返事は急かない。錆兎のことが、まだ忘れられないことも知っている。それでも俺は、Aに気持ちを伝えたかった」
『ありがとう。義勇の気持ちはすごく嬉しい。だけど…義勇の気持ちには応えられない』
義「わかっている。だとしても、お前に知ってほしかった」
私を見つめる義勇の瞳はどこまでも真っ直ぐで、そんなところが彼らしくて嬉しくなった。
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SILK(プロフ) - ツナモソチュロヌさん» 美しい物語だなんてそんな嬉しいお言葉ありがとうございます( ; _ ; ) (2020年3月8日 19時) (レス) id: 7fc337c787 (このIDを非表示/違反報告)
ツナモソチュロヌ(プロフ) - 美しい物語だと思いました(T_T)更新頑張ってください! (2020年3月8日 18時) (レス) id: 3cb3966213 (このIDを非表示/違反報告)
SILK(プロフ) - 水無月さん» ありがとうございますぅぅぅ( ; _ ; )これからも夢主ちゃんを見守ってあげてください( ; _ ; ) (2020年3月8日 11時) (レス) id: 7fc337c787 (このIDを非表示/違反報告)
SILK(プロフ) - 桜さん» ひぃぃ( ; _ ; )こんな作品で泣いていただけるとは嬉しい限りです( ; _ ; ) (2020年3月8日 11時) (レス) id: 7fc337c787 (このIDを非表示/違反報告)
SILK(プロフ) - うりょさん» ありがとうございます( ; _ ; ) (2020年3月8日 11時) (レス) id: 7fc337c787 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊太利亜 | 作成日時:2020年2月20日 23時