2話 ページ2
いや……いやいやいやいや！？
……嘘だろ。
撃たれちゃったんですけど。
え、なに？
あんたの中で私って捨て駒的要員だったの。
いつだったか忘れたけど、娘のような存在だって誰かに言ってなかったっけ？
私もう三十路だし娘って歳でもないけどさあ。
歳も一回りくらいしか違わないし？
でも、でもさあ。
私は、あんたのこと……
「すまない……すまないっ……！家族のために、妻と娘のために……死んでくれ……！」
なんであんたが泣くの。
所詮は赤の他人でしょ……
ていうか、私あんたの家族のために殺されるの……そう。
まあそんな理由だとは思ってたけどさ。
奥さん、ものすごい嫉妬深かったし？
私一回毒仕込まれて殺されかけたからね！？
慰謝料請求しとけばよかった……
てか、私そのこと首領に黙ってたのに！
首領が変に私に気負わないようにって理由だから、奥さんに気を使ってとかじゃないんだけどね。
あーもー！！
絶対今回も奥さん絡みだ。
『アテクシと女狐どっちが大事なのよ！』みたいな。
んで、『アテクシ達が大事なら女狐を殺してちょうだい！じゃないと離婚ですから！！』どうよ、ビンゴ？
あら……カンが良すぎるのも考えものだなあ。
……私、そんな女に負けたんだあ。
自分で言うのもなんだけど、見た目は兎も角、中身はあれに勝ってたつもりなんだけど。
「なんで、私を……選んでくれなかったの、首領」
責めてるわけじゃないけどさ、いや、この口調じゃあ責めているように聞こえるかあ。
うわ、抱きしめないでよ……あんたが汚れちゃう。
もう、さっきから謝りっぱなしで、いつもの威厳溢れるあんたはどこ行ったんだよ。
本当、不器用な人。
……私、私ね、首領。
ずっと考えていたんだ。
もし、あんたが私を一人の女として愛してくれたらって。
絶対幸せにしてみせようって、あんたも、あんたと奥さんの子供も、私が持てる限りの愛情を注ごうって思った。
……いやだなあ。
私、ここで死ぬの？こんなところで死ぬの？
あんたは昔、愛する人に殺されるなら本望だって言ってたけど、私は愛する人と一緒に生きたかった。
首領と一緒に生きていたかった。
これだからいやなんだ。
女って生き物は、自分が一番じゃなきゃ満足できなくなる。
私は結果的に、一番になれなかった。
あんたは私を義理の娘のように見てくれたのに、それじゃあ足りなくて、裏切った。
謝るのは私のほうだ。
ごめんね、首領。
「……好きになっ、て、ごめんね」
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作者名：時計草 | 作成日時：2016年12月14日 2時
